上手な受診 患者自身が「主人公」 熊本大病院地域医療支援センター特任助教・高栁宏史医師に聞く

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 医療機関をどのようにしたら上手に受診できるか、医師との意思疎通はうまくできるか。患者にとって大きな悩みと言えるでしょう。ただ、かつての「医師にお任せ」の医療ではなく、これからは患者が「主役」となった医療が大切な時代になってきました。熊本大病院地域医療支援センター特任助教の高栁宏史医師に聞きました。

-医療機関をどう受診したらいいか、ふだんはなかなか意識できていません。

 「医療のかかり方については、誰も教わらないまま社会人になっているのが実情です。国民が多額の税金、保険料を負担して医療を支えているのにもかかわらず、医療や介護保険に関する制度や医療機関の受診の仕方について、学ぶ機会はほとんどありません。私たちの命、健康、生活を守る医療をどう受診するかを含めて、医療について義務教育などでも取り上げてほしいと思っています」

 「受診の仕方に関して、救急車の利用方法や、医療機関の時間外受診の仕方などが問題になっています。仕事で時間が取れないために時間外受診をする方もいるようです。しかし、それを医療機関が支える構図ではいけないのです」

 -一般的に「大病院志向」もあるようです。

 「取りあえず大きな病院なら大丈夫だろうという考えや、またはさまざまな検査を期待されて受診されていることはあります。それは病院を時間外受診する理由にも一部なっているように思います」

 -市民には医療に対して過剰に期待してしまう傾向もあります。

 「ここで皆さんに理解していただきたいのが『医療の不確実性』です。経験のある医療者が対応し、精度の高いさまざまな検査機器を用いても診断や治療、その後の経過などにおいて100%と言えることは多くありません」

 「身近な例では、インフルエンザの迅速検査も正しく診断できるのは大体6割くらいといわれています。つまり検査が陰性だからインフルエンザではないと、本当は言えないのです。また検査が陰性であっても何%の確率でインフルエンザの可能性があるとは言えます。しかし、目の前の患者さんが真にインフルエンザ『である』『でない』は、分からないのです」

 「だからこそ、医療者と患者との対話がとても重要なのです。そして、その対話が意味を持つための信頼関係を築くには継続的な関係性が重要です。そこにかかりつけを持つ意味があると思います」

 -医療機関を上手に受診するためのポイントを教えてください。

 「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)が普及を進めている『医者にかかる10箇条』が参考になります。受診の際に伝えたいことをメモして準備する、よりよい関係づくりは患者本人にも責任がある-など具体的に示しています」

 -非常に分かりやすいですね。

 「COMLは大阪市の認定NPO法人です。患者さん自身が『いのちの主人公、からだの責任者』であることを明記し、主体的に医療に参加し、患者と医療者の協働を目指しています」

 -厳しい財政状況の中、疾病構造や患者さんのニーズは変化し、多様化しています。

 「医療の需要が増える一方で、担い手は減っています。危機的状況にある医療を守るには医療者の取り組みだけでは不可能です。不確実性がある中で、多様なニーズに対応するためには、十分な対話が必要です。そのためにも上手な受診の仕方は重要です。自分自身の健康を守るために、住民、企業、教育、行政、医療分野とで取り組めたらと思います」

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 4年間にわたり連載した「ことばの点滴」は今回で終了します。(高本文明)