「一括りにしないで」 LGBTに対する意識

「カミングアウトする若い人も多いよ。僕はしないけど」と話すヤスヒロさん=県内

 1989(平成元)年、「セクシュアルハラスメント」という言葉が急速に広まり、新語・流行語大賞の新語部門金賞に選ばれた。平成の約30年で男女共同参画などは一定の進展をみせ、県内でも性的少数者(LGBT)や障害者、外国人に優しい地域社会を目指す意識は浸透しつつあるように見える。女性の社会進出も徐々に広がっている。マイノリティーの当事者の目に「平成」はどう映っているのだろう。長崎県は暮らしやすくなりましたか?
 「今は個人情報保護が進んでプライバシーも守られている。カミングアウトする若い人も多いよ。前よりは良くなったかも」
 県内で自営業を営む50代のヤスヒロさん(仮名)はゲイだ。未成年の頃の同性との性的体験以降、“罪悪感”にさいなまれた。「その後、女性と交際し『俺、普通だったんだ』と、ほっとした」
 大学卒業後、県内の会社に就職し20代で結婚。「会社でも『家庭を持って一人前』という風潮だった」。その頃、「同性愛者が集まる店」というものがあるとテレビドラマで知った。県内で店を見つけ訪ねた。「こういう世界があるんだな」。居心地が良かった。
 会社での成績は優秀。子宝も授かった。しかし30代で離婚。自営業を始めた。
 これまで周囲にゲイであることを公言していないし、今後もしようとは思わない。「職場や社会で個人の性的指向はまったく関係ないから」。家族にも言う気はない。「一度、家族にばれそうになって、しらを切った」
 今の生活は楽しく、特に不満はない。情報交流サイト(SNS)の発達などでゲイ同士の出会いも容易になった。同性とは結婚できないが「年を取ったら、みんなで共同生活しようって話している」と笑う。

 平成年間、県は人権に関する県民意識調査を1993、2001、05、10、15年の5回実施。関心のある人権問題を選択肢から選ぶ項目で「性的指向」が追加されたのは10年から。それまで人権問題の対象という認識さえなかったようだ。
 15年の調査で、性的マイノリティーに関し問題があると思う事項を尋ねたところ「地域社会での理解が不十分」(31.1%)「差別的な言動」(27.7%)などが上位だった。LGBTの権利が注目される現状を背景に、県は本年度「性の多様性に関する理解促進事業」を新たに開始。県内自治体でもLGBTのカップルを公的に認める制度導入を目指す動きが出ている。

 「理解は進んでいる。テレビでもよくLGBTの話題を放送してるし」とヤスヒロさん。重ねて尋ねてみた。それでも気になることってないですか? 少し考え、こう言った。「正直、同じ同性愛者でもレズビアンの気持ちは分からない。あと僕らと違って性同一性障害の人は援助が必要。LGBTといっても一括(ひとくく)りではないことは知ってほしい」

 


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