ボルボ 新型V60クロスカントリー 海外試乗|美し過ぎる北欧の銀世界でゲレンデエクスプレスの限界に挑戦

ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]

SUVとワゴンのイイとこ取り!なV60クロスカントリー

ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]
ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]

昨年登場したボルボの新型V60は、初代V60譲りの「スポーティな走り」と、V70の「ユーティリティ」を融合させたモデルである。「日本にはいいステーションワゴンがない」と嘆く人にぜひ積極的にお勧めできる一台だ。

しかし、そう言いつつも世界的なクロスオーバーSUVブームの中で、ステーションワゴンに返り咲く事に躊躇する人も多いと思う。そこでお勧めしたいのが、「ステーションワゴンの多様性」と「クロスオーバーSUV」の走破性を両立させたV60クロスカントリーだ。

2019年3月1日から予約受注がスタート、間もなく正式発表となるが、スウェーデンの北極圏に近いルレオで試乗を行なってきた。すでに桜も散る季節にも関わらず、「なぜ今さら冬季の試乗記なのか?」と思う人もいるかもしれないが、ここでの試乗は一般道を使った雪上/氷上試乗に加えて、サーキットを模した特設の氷上コース(何と海が凍っている!!)での“限界性能”を試すプログラムが組み込まれていた。

そこで今回の試乗では、一般道では体験できない領域の話を中心にお届けしたいと思う。

新型V60クロスカントリーはどんなクルマ!? その成り立ちを解説

兄貴分のV90クロスカントリーと比べ、アクティブな印象が増した

ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]

新型V60クロスカントリーのデザインだが、専用のフロントグリル(メッシュ調)やボディ下部を覆うクラッディング処理、専用アルミホイールの採用などでクロスオーバー化する手法は兄貴分のV90クロスカントリーと同じだが、ベースとなる新型V60特有の贅肉の少ないシュッとしたデザインと組み合わせると、アクティブな印象がより増している。

一方、インテリアはV60に準じており、「V60クロスカントリーならでは」と言う部分はないが、個人的には明るいインテリアカラーと組み合わせたほうが、より“らしく”見えるだろう。

日本仕様はガソリンターボ「T5」とAWDの組み合わせ、地上高は75mmもアップ

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パワートレインは本国仕様には2リッターディーゼルターボ(150ps/350Nmの「D3」、190ps/400Nmの「D4」)もラインアップされるが、今回北欧で試乗した新型V60クロスカントリーは、日本仕様と同じく250ps/350Nmを誇る2リッターガソリンターボ「T5」と8速ATの組みあわせ。駆動方式はV60シリーズ初採用となるAWDのみの設定で、同じくスウェーデンのハルデックス・トラクション製の電子制御多版クラッチを用いたカップリングを採用する。更にヒルディセントコントロールや専用のドライビングモードも備えるなど、ナンチャッテAWDとは違う。

サスペンションはV60クロスカントリー専用セットアップで、最低地上高はノーマル+75mm(サスペンションで60mm、タイヤサイズで15mm)の210mmを確保するのはもちろんだが、床下整流の事も考えた無駄な突起物がないフラットな床面は悪路でも大きな武器である。

ちなみに今回の試乗車は全てミシュラン製のスパイクタイヤが装着されていた(日本でスパイクタイヤは使用不可だが、こちらの地域では使用可能)。そのためグリップ力はスタッドレスタイヤの比ではなく、通常の雪上/氷上試乗より高い速度域でテストすることができた……と言うわけだ。

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新型V60クロスカントリーの走りを北欧の銀世界で徹底的に試してみる

地上高はアップしたがV60と変わらぬスポーティな走り、そして快適性も兼ね備える

ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]

スパイクタイヤを履いた新型V60クロスカントリーの走りはどうだったのか?

一般論では、ステーションワゴンベースのクロスオーバーSUVはベース車よりも穏やかな方向にセットされることが多く、兄貴分のV90クロスカントリーもそのような印象を受けたが、V60クロスカントリーはちょっと違っていた。走りの印象はベース車と変わらずレスポンス重視で軽快、初期ロールを抑えたスポーティな味付けに仕上がっている。つまり、エクスキューズなしに「目線が高いステーションワゴン」なのだ。

その一方で、快適性はスパイクタイヤを履いているにも関わらず非常に高いレベル。特に路面の凹凸のいなし方などは「可変ダンパーいらず」に感じた。

もっとパワーが欲しくなる高いコントロール性

ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]

氷上はESPスポーツモードで走行したが、いい意味で裏切られた。基本的には安定志向ではあるものの、ドライバーが適正なキッカケを与えるとダイナミックな姿勢変化も可能。特設コースと言うことで3速全開でコーナーに侵入→テールが流れる……と言うような状況もあったが、そんな時でも穏やかな挙動とコントロール性の高さに「おまえはスポーツワゴンか!?」と錯覚したくらい(笑)。

ちなみに普通に走る限りは十分以上のパフォーマンスのパワートレインだが、この時ばかりは「もう少し力が欲しい!!」と思ってしまった。そういう人のために、ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェアも用意されている。

AWDや電子デバイスの巧みな制御に感銘

ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]
ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]

更にAWDシステムの巧みな制御にもビックリ。ESCとの協調制御も相まって、車両の安定状態を保ちながら運転者の意図するコーナリングになるように前後駆動力の適切なトルク配分をリアルタイムで制御。ボルボには似合わない(!?)ゼロカウンター・ドリフトも楽々。

また、オンデマンド式のAWDの場合、過酷な走行条件では電子制御多版クラッチが熱で音を上げることが多いが、V60クロスカントリーは1時間近く元気に走っても一切問題なかった。

「ボルボは安全、長距離走行が楽」と言われるが、普段は決して表に出る事のないこうした限界走行での“懐の深さ”も一役買っているのは間違いない。まさに「性能を極めると安全になる」を体現していることが、北欧の銀世界で体感した非日常の試乗で理解できたような気がする。グループAやWTCCでチャンピオンを取ってきたのはダテではない。

一方、オフロード性能もナンチャッテレベルではなく、急な下り坂や斜面の走行などは重心の低さと言った素性の良さや適切に設定されたアプローチアングル/デパーチャーアングル、そして電子デバイスの巧みな制御も相まって、下手なクロスオーバーSUVよりも上だと感じた。

新型V60クロスカントリーをオススメしたいのはこんな人

ボルボ 新型V60クロスカントリー[欧州仕様車]

結論、「クロスオーバーSUVは興味があるけど走りもまだまだ楽しみたい」と言う欲張りな人にピッタリな選択だろう。ジャーマン3からの乗り換えはもちろん、日本車からの乗り換えもお勧めしたい。

中には「輸入車はハードルが高い」と言う声も聞くが、輸入車初の5年保証やアクティブローン/スマボなどニーズに合わせた様々なファイナンスプログラムも用意されているので安心である。

AWDの巧みな制御とコントロール性、そしてスポーティかつ快適な走り。新型V60クロスカントリーはまさに新時代の「ゲレンデエクスプレス」と呼びたい。

[筆者:山本シンヤ/撮影:ボルボ・カー・ジャパン]

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