現職と3新人 軸の戦いか MICE、新庁舎、多選…舌戦に熱 長崎市長選 直前情勢

 県都長崎市のかじ取り役を決める市長選が14日に告示される。4選を目指す現職の田上富久(62)と、県議の高比良元(66)、前市議の橋本剛(49)、社会福祉法人理事長で元市議の吉富博久(74)の新人3人を軸とした無所属計4人の戦いの構図がほぼ固まった。現職が進めるMICE(コンベンション)施設や新市庁舎の整備を巡り再検証や白紙撤回を訴え、多選批判も展開する新人ら。継続か刷新か。21日の投票日に向け舌戦は熱を帯びている。
 3日夜、高比良、橋本、吉富が市内でひそかに会合を持った。現職批判票の分散を懸念した元市議らが、候補者の一本化の可能性を探るために呼び集めた。
 ただ市長を目指す意欲は3人とも強く、政策も三者三様。結局、一本化に至らず「今後も考えられない」(ある出席者)。それぞれ独自の活動を続けている。
 昨年2月にいち早く出馬表明した高比良は街頭演説やミニ集会を重ね、認知度向上を図ってきた。県議の仲間たちも壇上に並んだ8日の決起集会で「大きな力も組織もない。愚直に政策を訴える」と力を込めた。
 高比良は地盤の市南部など周辺部で支持の広がりに一定手応えがあるとし「あとは、まちなかへどれだけ浸透できるかだ」とみる。
 「一人の市長に4期16年も続けさせていいのか」。9日、橋本を支援する市議が街頭演説で多選を批判。橋本も市政刷新を訴えた。
 公会堂存続などを巡り市に住民投票実施を求めた市民らが支援し、推薦団体も多い。陣営は「長崎を変える」と記したポスターを各地で張り進めており「(地盤の)まちなかで現職をリードしたい」と意気込む。
 吉富は2003年以来、2度目の市長選出馬となる。9日の事務所開きには、長崎大が市の容認を得て建設中の感染症研究施設「バイオセーフティーレベル(BSL)4」に反対する団体関係者も駆けつけた。
 吉富は田上市政について「市民に対し聞く耳を持たない」と批判。「徹底して街頭演説する」と“草の根”で支持拡大を目指す。
 一方の田上。知名度は圧倒的で多くの推薦団体が下支えしている。ただ強固な後援会組織があるわけではなく、前回無投票だったこともあり、陣営は集票の“実力”を測りかねている。
 田上は企業へのあいさつ回りを進めている。推薦する連合長崎の関係者は「他陣営は活発だ。これからてこ入れしたい」と話す。
 「現職は大丈夫、という気の緩みをなくすのが大事だ」。3月下旬の決起集会で選対幹部は壇上から支持者らに呼び掛けた。
 ほかに東京都在住の市民団体代表、寺田浩彦(57)も出馬表明している。
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