スピルバーグの名作テレビシリーズも復活! アップルがApple TV+のオリジナル番組を発表

スピルバーグの名作テレビシリーズも復活! アップルがApple TV+のオリジナル番組を発表

先日、北カリフォルニアにあるアップルの本社で、CEO(最高経営責任者)のティム・クックが、新たなSVOD(定額制ビデオオンデマンドサービス)を開始することを発表した。

今後アップルが予定しているApple News+、Apple Card、Apple Arcadeといった新サービスや、Apple TVの新アプリとともに、オリジナルコンテンツを配信するApple TV+を今秋からスタートさせることを紹介。さまざまな新シリーズの映像を集めたシズルリール(見どころを集めた映像)に加え、現在アップルと製作中のスティーブン・スピルバーグ、J・J・エイブラムス、M・ナイト・シャマランらハリウッドを代表する監督たちや、ジェニファー・アニストン、リース・ウィザースプーンといった女優たちが映画作りへの思いを語る白黒の映像を披露した。アップルがハイクオリティーのオリジナルコンテンツ作りを目指しているだけでなく、世界中の人々を結びつけるストーリーテリングの可能性を模索していくことを伝えた。

【クリエーターや俳優たちが登場し、各作品を紹介】

イベントの後半、アップルTV+の番組クリエーターや俳優たちがそれぞれの作品を紹介。トップバッターとしてスピルバーグが登場すると、会場内から割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。スピルバーグは自身が1980年代に手掛けたオムニバステレビシリーズ「世にも不思議なアメージング・ストーリー」を復活させることを明かした。

「僕がSFと初めて出合ったのは1926年から始まったアンソロジー雑誌『AMAZING STORIES』なんだ。当時5歳だった僕に、父がその中のストーリーを語ってくれたんだ。それは素晴らしい時間だったね。僕らはこのブランドを、マルチ世代の観客に向けてよみがえらせることにした。すべてのエピソードで、観客をどこかに連れていきたいと思っている。第2次世界大戦のパイロットが飛行機でタイムトラベルして、過去から現在に飛んでくる物語のようにね」

続いて、ジェニファー・アニストンとリース・ウィザースプーンが登壇し、一緒に主演とプロデュースを手掛ける新シリーズ「MORNING SHOW」を紹介。本作は、「ベイツ・モーテル」のケリー・エーリンが脚本を担当し、朝のニュース&トーク番組の世界を描くドラマ。ウィザースプーンは、「『MORNING SHOW』は、何が起こるか分からない朝のニュース番組に関わる男女の間にある、力関係を描いているの」と言い、アニストンは、「(テレビの)カメラの前と後ろにいる人たちの、職場での複雑な関係をありのまま見せている」と付け加えた。アニストンは、久々に本格的にテレビシリーズに復帰した理由について、「(この作品のみんなと)共同制作できるチャンスが、私をまたテレビに引き戻したの。とても興奮しているわ」とうれしそうに語った。発表の途中で、主役を演じるスティーブ・カレルも登場した。

映画「アクアマン」の世界的な大ヒットで一躍大スターとなったジェイソン・モモアと、「デスパレートな妻たち」などで知られるベテラン女優、アルフレ・ウッダードの2人は、ウイルスで世界中のほとんどの人たちが死滅した後、生き残った人類が長い間、視覚なしに自然の中で暮らしている世界を描くSFドラマ「SEE」を紹介。そこでは、人類にとって視覚は神話になっているという。プレゼンの中でモモアは、観客に向かって「目を閉じてほしい。すべてをこのように体験することを想像してみて」と呼びかけ、観客は暗闇の中でしばし、水が流れる音や鳥のさえずりなどに耳を傾け、自然の中にいる感覚を体験した。

映画「ビッグ・シックぼくたちの大いなる目ざめ」で昨年アカデミー賞の脚本家賞にノミネートされたコメディー俳優のクメイル・ナンジアニは、子ども時代にパキンスタンからアイオワ州に移民としてやって来た時の経験をユーモアたっぷりに話して観客を笑わせると、「僕らは移民たちが日々の暮らしでやっていることにフォーカスしたかった。『LITTLE AMERICA』は、移民をフィーチャーしたヒューマンストーリーだよ。僕らは最終的に、同じものを探している。食べ物、家、(人生の)意味、愛といったものをね。本作は、ユタ州で両親がモーテルを経営しているインド人の12歳の男の子が、ある日突然、両親が国外退去となり、たった1人でその後10年間にわたり、両親のアメリカンドリームを守るためにそのモーテルを経営したという実話を基にしているんだ」と語った。

J・J・エイブラムスと、グラミー賞ノミネート歴を持つミュージシャンのサラ・バラリスは、シンガーソングライターとしてのバラリスの経験を基にした新シリーズ「Little Voice」を紹介。バラリスは、「数年前、J・Jと会った時、私はシンガーソングライターとしての経験、葛藤、ドラマ、狂気について話したの。そしたら彼は、それをシリーズとして描くことを考えたことはある?と聞いてきて、本当はなかったのだけど、私は『イエス。あるわ』と答えたのよ」とシリーズが生まれたきっかけを語った。ニューヨークを舞台にした本作は、若い女性が音楽を通して、アーティストとして、人として、“自分の声”を見つけるというユーモアのあるロマンチックな作品だという。J・Jはまた、「夢を追いかけるためにすべてを注いでいる人たちの作品だよ。サラがこの作品のクリエーター&プロデューサーとしていてくれるだけでなく、作曲家でもあるのはとてもラッキーだよ」とコメント。プレゼンの最後にバラリスが番組のテーマソングをライブで歌った。

そして、今回のイベント全体のトリとして、アメリカの国民的スター、オプラ・ウィンフリーが登場。ウィンフリーは、アップルと組んで、職場でのセクハラ問題をテーマにした「TOXIC LABOR」と、メンタルヘルスについての2本のドキュメンタリーを準備していることを明かした。

アップルは今回発表された作品以外にも、M・ナイト・シャマランが手掛けるシリーズ、J・J・エイブラムスとジェニファー・ガーナーが久々にタッグを組むシリーズ、ブリー・ラーソン主演のCIAのスパイもの、映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」の監督、タイカ・ワイティティがテリー・ギリアムの映画「バンデットQ」を翻案するシリーズなど、興味深いシリーズを数多く製作中、または準備中のようだ。Apple TV+のサービスがどのぐらいの価格になるか、秋までにどのぐらいの作品が見られることになるかはまだ分からないが、ハリウッドのAクラスの監督、俳優たちが勢ぞろいしているアップルTV+のラインナップが、ドラマ好きの多くの視聴者たちの興味を大いにそそるのは間違いないだろう。

取材・文/細谷佳史

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