【気象コラム】虹始見(にじはじめてあらわる)

 4月14日から19日ごろは、七十二候の虹始見(にじはじめてあらわる)です。その年、はじめて虹がかかるようになる頃、という意味。日差しの弱い冬は、虹は現れても薄く、すぐに消えてしまいます。俳句で「初虹(はつにじ)」は、春の季語。春になり、日差しが強まってくると、虹に出合えることが増えてきます。とはいえ、春の虹は、夏の夕立のあとに出現するくっきりとした虹に比べると、淡くはかないため、見過ごしていることも少なくないでしょう。

 

春の虹

 虹は、空の一部に雨粒があり、太陽が照っているときに現れます。太陽の光が雨粒の中で、進行方向が変わり、跳ね返って、色別れしてきた光を見ているのです。このため、虹を見ている時は、常に太陽を背にして、雨や空気中の雨粒に向き合っていることになります。空高くかかる大きな虹は、太陽の高度が低い、日の出直後や日の入り直前に現れます。

  春は、上空に寒気が流れ込んだり、地上付近で暖気が流れ込んだりして、大気の状態が不安定になり、局地的に雨が降ることがあります。にわか雨が上がったら、虹を見るチャンス。ぜひ、太陽に背を向けて、空を見上げてみて下さい。

  虹は条件がそろえば、雨上がりに限らず見ることができ、春に出現する虹は、ときに天気の移り変わりを教えてくれます。

 春は偏西風が日本の上空を流れるようになり、日本付近を高気圧と低気圧が交互に通します。このため、天気は短い周期で変わり、雨雲は西から近づき、東へと離れていきます。朝に虹を見るときは、西を向いて雨雲に向き合っています。雨雲は近づいてきていることを示し、まもなく雨が降ることがわかります。夕方に虹を見るときは、東を向いて、雨雲に向き合っています。雨雲は東へ離れていき、晴天となる兆しです。

 虹はこれから出合うたびに、くっきりとしてきます。色濃くなる虹に季節の移ろいを感じられるでしょう。

 (気象予報士・白石圭子)

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