FIFAもNBAもMLBも「持続可能性」注力、その狙いは

セッション「スポーツイベントにおける持続可能性~その現在と未来」

サッカーワールドカップやオリンピック・パラリンピック、NBA(米プロバスケットボールリーグ)、MLB(米プロ野球リーグ)、NFL(米アメリカンフットボールリーグ)などのメガスポーツイベントを運営するために、「持続可能性」は欠かせない要素になった。UEFA(欧州サッカー連盟)は、「気候変動とサッカーはどう関係するのかと問われたら、『すべてにおいて』と答える」と言い切るまでの時代になった。スポーツイベントは、なぜ持続可能性に注力するのか。(オルタナS編集長=池田 真隆)

サステナブル・ブランド国際会議2019東京では、「スポーツイベントにおける持続可能性」をテーマにしたトークセッション「未来メディアカフェvol,22」が行われた。

同セッションに登壇したのは、一般社団法人Sport For Smile代表理事の梶川三枝さん、横浜DeNAベイスターズ・ブランド統括本部広報部広報グループリーダー長の河村康博さん。ファシリテーターは朝日新聞社スポーツ部記者の前田大輔さんが務めた。

スポーツ界がなぜサステナビリティに取り組むのか。梶川さんは背景と狙いについてこう説明した。「イベント運営では、膨大な電力やプラスチックを消費する。だからこそ、環境配慮がスポーツ団体を運営するためのキーになってきた」。

「海外にはスポーツ界と関連企業、NGOなどが組んだネットワークやディスカッションの場が多数ある」として、具体的な動きの一つに、北米のプロスポーツチームからなる「Green Sports Alliance」を例に挙げた。同団体は気候変動対策やスタジアムの廃棄物について議論を交わしていると言う。

梶川さんは、「最近では、環境だけでなく、人権問題にも力を入れている」と話す。スイスのジュネーブに本拠地がある「SandSI(Sport and Sustainability International)」がその筆頭と述べた。

さらに、今ではMLB、NFL、NBAのすべてのリーグに、サステナビリティを推進する部署があり、課題やアイデアを共有していると言う。

「近年ではIOC(国際オリンピック委員会)が国連の会議でスポーツ界でのサステナビリティの推進をリードしていくとコミットし、FIFA(国際サッカー連盟)が労働問題、サステナビリティ、人種差別、地球温暖化防止という4つの分野を掲げて、2024年ワールドカップに向けて組織委員会と協働していると発言した。メガスポーツイベントの運営のすべての局面においてサステナビリティにコミットしていかなければいけない、ということが強調されている」(梶川さん)

日本での動きとしては、Bリーグ(男子プロバスケットボールリーグ)の「B.LEAGUE Hope」を紹介した。この取り組みでは、小学生向けにSDGs(持続可能な開発目標)を訴求している。

キーワードは「オフコートの3P(スリーポイント)」だ。SDGsの17目標を「Planet」「People」「Peace」という3つの領域に分類し、キャッチ―な言葉で参加しやすい仕組みを作った。狙いは「ファンを動かすこと」(梶川さん)だと言う。

横浜DeNAが掲げる「横浜スポーツタウン構想」

河村さんは、横浜DeNAベイスターズのホームグラウンドである横浜スタジアムの稼働率を50%から97%にした取り組みを紹介した。横浜駅周辺にデジタルサイネージを設置して、横浜愛を強調したり、お酒を飲みながら野球を楽しめるように横浜公園内に大型モニターを設置したりするなどを例に挙げて、横浜の街を舞台にした「横浜スポーツタウン構想」について説明した。

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