妻のみとり体験語る 若年性認知症介護、家族会先輩が支え

妻悦子さんのみとり体験を語った岸正晴さん=二俣川地域ケアプラザ

 「認知症の人と家族の会県支部」(杉山孝博代表)の講演会と総会が13日、横浜市旭区の二俣川地域ケアプラザで開かれ、同会副代表の岸正晴さん(71)=横須賀市=が、ことし1月に66歳で亡くなった妻悦子さんの介護と、みとり体験について講演した。17年にわたった在宅介護は「家族会の先輩のアドバイスが支えだった」とし、最期は「私の胸の中で、息子2人の目の前で息を引き取りました」と語った。

 悦子さんは49歳の時に若年性認知症(アルツハイマー型認知症)と診断された。「戸惑うばかりで、おいおい泣きました」と岸さん。そこで救いになったのが、医師から紹介された認知症家族会。先輩家族に一から介護を学んだ。「それまでは家には夜中に帰る生活。残りの人生は妻と一緒に過ごそうと決意しました」。家族の助けも得て、働きながらの在宅介護に取り組んだ。

 介護は想像以上に長期にわたった。「申請するまでサービスがあることを教えてくれない」という役所の申請主義も思い知らされた。利用できる制度を教えてくれたのも先輩家族。デイサービス、ショートステイなど介護保険サービスを活用し、在宅介護を続けた。

 容体が変化したのは昨年末。悦子さんは口から食べられなくなった。「同じベッドで寝ていて、延命措置はこれ以上やめてくれと言っているように感じました」。口を綿棒で濡らしながら、語りかけ、歌いかける日々が続いた。1月2日、息子、孫ら家族全員が見守る中で息を引き取ったという。

 岸さんは悦子さんの介護と並行し、「よこすか若年認知症の会タンポポ」代表として、地域の若年性認知症の人と家族の支援も続けてきた。「若年性認知症の介護では家族会の力が欠かせない。介護する家族を支えていきたい」。これからも悦子さんの介護経験を伝えていく決心だ。

 総会・講演会には約40人が参加。県支部2019年度事業計画なども決定し、杉山代表は「会員を増やし、幅広く先進的な活動を続けていきたい」と新年度の抱負を語った。

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