[水沼貴史]追い詰められたマンC 2ndレグでの逆転に必要なことは?

1stレグではマンCの攻撃陣が沈黙。前半13分のアグエロ(左)のPK失敗も響いた photo/Getty Images
1stレグではデ・ブライネやサネを先発から外し、手痛い黒星。グアルディオラ監督の采配に注目だ photo/Getty Images

水沼貴史の欧蹴爛漫 027

トッテナムの術中にはまったマンC

水沼貴史です。UEFAチャンピオンズリーグ・準々決勝の4試合が現地時間の9日と10日に行われ、どの試合も手に汗握る攻防となりました。今回は私が1stレグの解説を担当させて頂いたマンチェスター・シティ対トッテナムの一戦についてお話しします。優勝候補の筆頭に挙げられているマンチェスター・シティですが、敵地で行われた1stレグで0-1の敗戦を喫してしまいました。毎試合のように複数得点を挙げている彼らがなぜ1stレグで攻めあぐねたのか。そして彼らが2ndレグでこのビハインドを覆すために必要なことについてご説明しましょう。

マイボールの時にサイドバックがあえてインサイドハーフのポジションに立ち、味方GKや最終ラインからのビルドアップを助けるのがマンチェスター・シティの攻め方ですが、1stレグではこのサイドバックがトッテナムの面々の徹底マークに遭い、攻撃の起点として機能できなかったと私は思います。マンCはこの試合でもいつも通り両サイドバックのファビアン・デルフとカイル・ウォーカーが適宜中央へ入り、中盤で数的優位を作りながらパスを散らそうとしていましたが、トッテナムの両サイドハーフ(クリスティアン・エリクセン、ソン・フンミン)がマンマーク気味でデルフとウォーカーを監視していたので、自陣でのパス回しが手詰まりになってしまいました。トッテナムが試合全体を通じて最終ライン、中盤、最前線の3ラインをコンパクトに保ってスペースを消したこと、ハリー・ウィンクスとムサ・シソコの2ボランチが対面のダビド・シルバとイルカイ・ギュンドアンを徹底的に潰したこともあり、マンCは流れの中でほとんど相手に脅威を与えられなかったというのが私の印象です。1stレグではサイドバックのインサイドハーフ化を利用したビルドアップを完璧に封じられてしまったマンCのジョゼップ・グアルディオラ監督ですが、2ndレグにむけ何か秘策を用意しているのか。実に興味深いところです。

マンCの1stレグでの攻撃を見ていると、敵陣ペナルティエリア内の両脇のスペースや、最終ラインの背後といった相手の急所を狙う選手がいつもより少なかったと思います。ケビン・デ・ブライネやベルナルド・シウバは自分でパスをはたきながら状況に応じてこうした動きができるのですが、前者はベンチスタート、後者は負傷欠場でした。この二人がいなかったせいか、両ウイングのリヤド・マフレズやラヒーム・スターリングに対するフォローが少なく、彼らがサイドで孤立しているように見受けられました。ベルナルド・シウバの負傷の程度が気がかりですが、デ・ブライネは間違いなく2ndレグの先発に名を連ねるでしょう。1stレグの後半44分に投入された彼がアディショナルタイムにいきなりペナルティエリア内の右隅に侵入し、際どいクロスを入れるというシーンがありましたが、このような攻撃を2ndレグで多く繰り出せるか。この点がマンCの命運を左右するはずです。

また、2ndレグでは左サイドバックの人選がカギを握ると思います。1stレグでは[4-2-3-1]の布陣のこのポジションにデルフが入り、キックオフ直後は彼が相手MFエリクセンと対峙するという構図でしたが、デルフのスピードに難があることを見抜いたトッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督が前半15分あたりに両サイドハーフのポジションを入れ替え、エリクセンよりもスピード豊かなソンにデルフの背後を狙わせていました。既にバンジャマン・メンディが現地時間6日のFA杯準決勝(ブライトン戦)で戦列復帰を果たしていますので、2ndレグではデルフよりもスピードや機動力がある彼を起用し、サイドの攻防で優位に立ちたいところでしょう。2ndレグでは得点が必要ですので、私としてはメンディを先発にチョイスするのが得策だと思いますが! この試合をご覧の皆さんには、グアルディオラ監督の人選にぜひご注目頂きたいです。

ではでは、また次回お会いしましょう!

※UEFAチャンピオンズリーグの準々決勝2ndレグ、マンチェスター・シティ対トッテナムの一戦は、日本時間4月18日(木)の早朝4時00分にキックオフ!

水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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