信頼されるリベロに バレーボール・小幡真子 2020に懸ける長崎県勢 File.5

「競技を通じて人としても成長したい」と語る小幡=兵庫県西宮市、JTバレーボール部体育館

 シーズンも佳境に入ったバレーボール女子Vリーグ。上位争いをしているJTの試合で存在感を放っているのが、チームで最も小柄な164センチのリベロ、小幡真子だ。抜群の瞬発力、状況判断に優れたプレーはもちろん、際立っているのはそのリーダーシップ。流れに応じた声掛けで雰囲気をつくり、目いっぱい体を使って盛り上げる。そんな26歳が目指しているのが「ここ一番の場面で上げられる、信頼されるリベロ」。チームでも、日本代表でも、その姿を追い求めている。

 ■言い訳せずに

 2008年春、自他ともに認める負けず嫌いの少女は、古里の熊本県上天草市を離れて長崎へ渡った。好きなバレーで成長したくて選んだ九州文化学園高は、何度も日本一に輝いている。誇りあるチームでやれるという期待を胸に、入学式へ臨んだ。

 その全国優勝を目指した練習の中で「自分が輝ける」ポジションと出合う。それがリベロだった。小中学時代はスパイカー。ただ、当時から身長は高くなく、守備面での貢献も意識してきた。自然と身につけたレシーブという武器。井上博明監督にも見込まれて、2年から本格的に転向した。

 技術面だけではなく、競技に取り組む姿勢のベースをつくってくれた高校の3年間。「弱みも含めて自分を受け入れ、言い訳せずにやるべきことをやる」。今も、井上監督から最初に教わった理念を胸に、一日一日を大切に歩んでいる。

 ■必要とされる

 レシーブ専門のリベロは極端に言えば「コートの中で一番時間がある」。それを有効に使って、いかにチームの役に立てるか。仲間の動きや相手コートの状況など、あらゆるところに目を配って考える。高校で基礎ができ、大学で視野が広がり、JTで自分のスタイルが確立しつつある。

 社会人3年目の17年から日本代表に呼ばれた。実際に日の丸をつけて感じたのは「身を削られるようなプレッシャー」。その中で、強さも、駆け引きも、これまでとは比べものにならないような世界の強豪チームのボールを受ける。日本のような小さなチームは、レシーブが生命線だとあらためて知った。

 バレーボールは東京五輪の開催国枠を持っている。大舞台は見える位置にあるが、最優先は「チームで日本一」。目の前の試合をしっかり勝ち抜くためのプレーを通じて、20年も日本代表に必要としてもらえたら一番いい。

 小学6年のころ。古里の小さな学びやを巣立つ時、みんなの前で「プロバレーボール選手になって日本代表に入る」と宣言した。かなえたその夢の続きは、きっと東京にある。

 【略歴】こばた・まこ 現在の久光製薬でプレーしていた母の影響で小学4年から競技を始める。九州文化学園高時代はインターハイで準優勝2回、3位1回。日体大4年で主将を務め、全日本大学女子選手権優勝に貢献。MVPとベストリベロ賞を受賞した。JT3年目からメンバー入りした日本代表では、主にサーブレシーブを担当。2018年世界選手権でベストレシーバー部門1位に輝く。趣味は写真を撮ること。164センチ。熊本県上天草市出身。

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