出場は当然 メダル狙う ライフル射撃 松本崇志

2020に懸ける長崎県勢 File.6

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 過去3大会、届きそうで届かなかった五輪切符。ライフル射撃の松本崇志にとって、東京はもはや目指す場所ではない。「自分の中では行くと決めている。狙っているのはその先」。2000年のシドニー大会以来、日本勢5大会ぶりのメダル獲得-。成し遂げたとき、歩んできた道が正しかったと、きっと思える。

■自信が確信に
 競技歴20年。高校、大学、社会人で日本一になり「エア立射の第一人者」と称された天才も、五輪だけは縁遠かった。08年北京大会は5位で代表内定という世界選手権で1点差の6位。12年ロンドン大会、16年リオデジャネイロ大会も紙一重で逃した。焦りは迷いを生み、持ち前の勝負強さに陰りが見えだした。
 転機はリオ切符を逃した後の16年4月。「思い切って、一度競技から離れてみよう」と陸自の幹部候補生学校に入校した。10カ月間、銃を手にせずに厳しい訓練に打ち込む日々。総重量30キロのリュックを背負い、100キロの距離をひたすら歩いたこともあった。
 この思い切った“勝負”は功を奏した。心身ともにたくましさを増した。「またゼロからのスタートで、段階的に上達していく感覚がうれしかった」
 そうして培った自信が確信に変わるまで、時間はかからなかった。18年夏のジャカルタ・アジア大会ライフル3姿勢で3位。国際大会で自身初のメダルを手にすると、秋の全日本は3種目で頂点に立った。

■大きな地の利
 1896年の第1回アテネ五輪から実施されているライフル射撃。わずかな心の揺らぎが大きく結果を左右する「メンタルのスポーツ」で、重要な大会になればなるほど、その傾向は強くなる。「いい格好しよう、絶対10点(標的の中心)入れようと意識した瞬間、どこか力が入って外す。だからこそ一発一発の積み重ねが大切」。練習は毎日5時間に及ぶ。
 私生活でも感情の起伏を小さくするように努めている。五輪出場条件は国際大会上位入賞など細かく定められているが、パフォーマンスに影響しないように「あえて知らないようにしている。自分のベストを出し続ければ、必ず代表に選ばれるはずだから」。
 精神面が大きく影響する性質上、五輪の母国開催はアドバンテージになり得る。しかも、会場は自らが所属する自衛隊体育学校が入る朝霞駐屯地(東京、埼玉)。地の利は絶大だ。「環境、場所、人の優位性で特別な大会。ただ、周りの期待、変化もある。その中で勝つためのプロセスをしっかり続けていきたい」
 浮かれず、流されず、今、やるべきことをやる。感情を爆発させるのは、東京で結果を出すまでとっておく。

 【略歴】まつもと・たかゆき 島原市出身。島原工高でライフル射撃を始め、日大を経て自衛隊体育学校に入校。高校2年時の富山国体で初の日本一になり、以降国体で12度の優勝を誇る。2018年ジャカルタ・アジア大会ライフル3姿勢銅メダル、全日本3種目優勝。現在は海外4カ国のワールドカップに参戦中。3月末、ともに東京五輪を目指す妻、真希との間に第1子、唯禾(ゆの)が誕生した。168センチ、67キロ。35歳。

東京五輪に「行くと決めている。狙っているのはその先」と言い切る松本=埼玉県朝霞市、自衛隊体育学校