霊峰「伊吹山」自然と人を生かす豊かな水の恵み
古事記や日本書紀に“水の神”が宿るとされ、古くから崇敬されてきた伊吹山。春まで残る残雪や豊富な雨が大地を潤し、滝や川を抜け、裾野にまで清らかな水を届けています。標高1377m、滋賀県最高峰の頂からは西に琵琶湖、比良山、比叡山、東に日本アルプスをのぞむ大パノラマが広がっています。日本海に近い石灰岩地帯、寒冷な気候の影響を受け、希少な高山植物や薬草の宝庫でもあり、これからの季節は美しい花畑に彩られます。
水文化の息づく「東草野の山村」
奥伊吹、姉川上流部の谷底平野。北から甲津原、曲谷、甲賀、吉槻の4集落が集まる東草野地区は、西日本屈指の豪雪地帯であるため、積雪への備えや水利用設備などに独自の文化があり、日本遺産・国重要文化的景観に選定されています。かつては農業のほかに地域資源を利用した副業が盛んで、早くから東浅井や岐阜方面への峠道が拓かれ、とりわけ吉槻では交易による繁栄の名残をとどめています。
現在は、高齢化・人口減少による空き家増加が深刻化し、住民はもとより県外からの移住者や地域おこしに協力する人々によって、山里を守るさまざまな活動が行われています。
水中花揺れる夏の醒井「地蔵川」
醒井の地蔵川では、5月下旬から8月にかけて可憐な「梅花藻」が川面に咲き、多く見物客が訪れます。平成の名水百選に選定された「居醒の清水」と呼ばれる地蔵川の源流では、1日およそ1万5千トンもの水が湧き出しているとのこと。川沿いに住居が並び、古くから人々の生活用水でありながら清らかな水質が受け継がれてきました。
―大人の探訪スポット―
雄大な伊吹山にいだかれる米原市には、
250を超える湧き水や滝があります。
まぶしい緑と花々に包まれる寒冷地の夏。
いざ涼を求め、名山と名水のまち「米原」へ。
・01 ~梅花藻が咲く醒井の地蔵川~
・02 ~山のごはん よもぎ~
・03 ~白山神社の乳イチョウ~
・04 ~東草野の山村~
取材:2017年6月