新生児低血糖とは?後遺症が残ることもある?妊娠中に気をつけることは?

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【医師監修】この記事では新生児低血糖について、医師監修のもと解説します。新生児低血糖は明確な治療の基準が定められていませんが、「血糖値<50mg/dl」が治療を開始するひとつの目安になります。治療の遅れは赤ちゃんに危険を及ぼすため、迅速に的確な診断をおこない、適切な方法で治療することが重要です。

新生児低血糖は、赤ちゃんの血液中の糖分(ブドウ糖)が少なく、血糖値が低い状態をいいます。低血糖になると脳に深刻な影響を及ぼすことがあるため、適切な診断と治療が必要です。また、新生児低血糖は、ママの血糖値が高いなど母体の状態が原因で発症することもあるので、予防のためには妊娠中に血糖が高くないかを評価します。今回は新生児低血糖の原因・症状・後遺症のほかに治療法について解説します。

新生児は低血糖になりやすい?

正常な赤ちゃんは生まれた直後(生後1~2時間)は血糖値が下がり、その後、徐々に上昇して生後2~3日で安定するのが一般的です。出生直後に、生理的な変化としてみられる血糖値の低下は、赤ちゃんが生まれたと同時に母体からのブドウ糖の供給がストップすることに関係しています。

赤ちゃんは、ママのおなかにいる間は胎盤を通じてブドウ糖などの栄養分をもらっていますが、出生後は栄養分の供給がなくなるので一時的な血糖値の低下(一過性の低血糖症)が起こりやすいのです。

一過性でなく、低血糖の状態が持続している場合や何度も低血糖を繰り返す場合、また、赤ちゃんの元気がないなど症状が現れている場合は注意が必要です。早期に適切な治療をおこなわないと新生児低血糖症になったり、脳に何らかの障害が残ったりする恐れもあります。

新生児低血糖の原因・症状

新生児低血糖は、母体の因子・新生児の因子などさまざまな原因が考えられます。また、新生児低血糖は症状があまり目立たないこともあり、血糖を測定してはじめて気づかれることもあります。さらに、ほかの病気の症状に似た症状が現れることもあるため、ほかの病気との区別(鑑別)も必要です。

新生児低血糖の原因

●エネルギーの需要が増え、ブドウ糖の消費が増える

体内のブドウ糖は肝臓でグリコーゲンに変えられ貯蔵されます。このグリコーゲンがさらに分解され、エネルギー源として働きます。

赤ちゃんが生まれてからは自分で呼吸し、体温を保つなど母体外生活に適応するためにエネルギーを消費します。生まれた際に新生児仮死や呼吸障害、低体温などがあると全身のエネルギー需要が増え、グリコーゲンがより多く必要となってしまいます。エネルギーの需要に対し、グリコーゲンの需要が間に合わなくなると低血糖に陥ってしまいます。低血糖になっても脂肪を分解したり、ケトン体を作れると症状がでないこともあります。脳はブドウ糖以外にケトン体もエネルギーとして使うことができるからです。

●肝臓でのグリコーゲンの貯蔵が少ない

早産児や多胎児、胎児発育不全の赤ちゃんは、正期産児に比べてからだが小さく、肝臓に蓄積されているグリコーゲンも少ない状態で生まれてきます。そのため、生まれてからの生理的な低血糖に対してグリコーゲンを分解して対応していくものの、すぐにグリコーゲンが枯渇して低血糖に陥ってしまいます。

●高インスリン血症

ママが糖尿病や妊娠糖尿病を合併していたり、切迫早産の治療で子宮収縮抑制剤を使用していたりすると、おなかの中の赤ちゃんは高血糖状態になります。すると、血糖値を下げようとインスリンの分泌が亢進した状態になります。赤ちゃんが生まれ、ママからの糖の供給が止まったあとも、インスリンの分泌が亢進した状態がつづくので、さらに血糖値が下がり、低血糖に陥ってしまいます。

●その他

上記に加え、Ⅰ型の糖尿病、ガラクトース血症、高インスリン血症などの先天代謝異常や内分泌疾患などでも低血糖に陥ることがあります。低血糖が持続したり低血糖が繰り返される場合は注意が必要になります。

新生児低血糖の症状

新生児低血糖では、次のような症状が現れることがあります。

・元気がない
・振戦(震え)
・無呼吸や多呼吸などの呼吸異常
・活気がない
・泣き声の異常(甲高い泣き方)

・けいれん
・頻脈
・多汗
・皮膚蒼白、チアノーゼなど顔色が悪い
・おっぱいやミルクの飲みが悪い

新生児低血糖の治療方法

新生児低血糖は明確な治療の基準が定められていませんが、「血糖値<50mg/dl」が治療を開始するひとつの目安になります。治療の遅れは赤ちゃんに危険を及ぼすため、迅速に的確な診断をおこない、適切な方法で治療することが重要です。

●呼吸障害、けいれん、活気がない、頻脈など、低血糖症状がない場合
血糖値が50mg/dl未満で、授乳可能な場合は、まず授乳をおこないます。その後、血糖値が安定したら定期的に血糖値を測定しながら経過を観察します。授乳をしても血糖値が安定しない場合は、ブドウ糖液の点滴をおこないます。

●呼吸障害、けいれん、活気がない、頻脈など、低血糖症状がある場合
血糖値の値が50mg/dl未満で臨床症状が現れているときは、ブドウ糖液の注射や点滴をおこないます。血糖値を保てない場合はステロイドやグルカゴン、ジアゾキサイド(高インスリン血症の場合)などの薬剤を使って治療します。

このような場合、NICUでの入院管理が必要なることもあります。

新生児低血糖による後遺症や診断後の生活について

新生児低血糖は脳に大きな影響を与え、低血糖状態が続くと、次のような神経学的後遺症につながる可能性があります。
・発達遅延
・けいれん
・脳性麻痺

●診断後の生活
「完全母乳で育てたい」という希望をお持ちのお母さんもいらっしゃることでしょう。ただし、新生児低血糖と診断された場合は、母乳とともにミルクも積極的に活用し、赤ちゃんに必要な糖分を補うことが重要です。

たとえば、母乳の出が悪い、赤ちゃんがなかなか母乳を飲まないなど、母乳だけでは栄養が足りない状態が続くと赤ちゃんの血糖値はますます下がってしまうでしょう。

糖分は体のエネルギー源となるので、赤ちゃんが生きていくうえで糖分の摂取はとても重要です。完全母乳による育児を希望されているお母さんも、必要に応じて「母乳と粉ミルク(人工乳)を組み合わせて育てるなど考え方を拡げ、柔軟に対応をしましょう。

新生児低血糖にならないために妊娠中に気をつけること

糖尿病の人が妊娠した場合、生まれた赤ちゃんが新生児低血糖になることがあります。また、妊娠前は糖尿病でなくても、前述のように妊娠糖尿病の場合にも低血糖が起こりやすいので妊娠中は体重管理に気を配り、糖分の摂取量にも注意しましょう。

おやつや食後のデザートで甘い物を食べるときは食べ過ぎに注意し、フルーツに含まれる糖分も見逃しがちなので気をつけましょう。

低血糖があってもケトン体が作られれば低血糖の影響を受けにくくなります。ケトン体を作るには脂肪酸のβ酸化が重要です。β酸化にはカルニチンが必要です。カルニチンは肉や魚、乳製品に多く含まれます。妊娠中にバランスをとった食事をすれば低血糖になっても症状を軽減することができます。母乳中のカルニチン量を増やすためには出産後の食事も気を配りましょう。

まとめ

新生児低血糖は症状が明確に現れないものがあり、一方で重い後遺症を残す可能性もあるので迅速で適切な診断と治療、そして予防的な対応も重要です。新生児低血糖の原因としては生まれつきの病気のほかに、妊娠中のお母さんの糖代謝異常や出生後の赤ちゃんの哺乳状況などが関係することもあります。妊娠中の要因については食生活などに気をつけることで予防を図り、出生後は母乳だけでなく、必要に応じて粉ミルクで糖分を補うなど、柔軟に対応しましょう。


監修者:医師 神奈川県立こども医療センター総合診療科部長 松井 潔 先生

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て現在、同総合診療科部長。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医