愉快倶楽部 私のもうひとつの場所 Another Life

今が一番幸せ。あと一歩の勇気で人生が変わる。

小倉 昌和さん(52歳) 東近江市在住 バンド「Rag Time」ヴォーカル、ウクレレ、ギター、ハーモニカ担当

快活で人を笑顔にするパワーがあふれる小倉さん。

周囲が引き寄せられるその魅力は、小倉さんが歩んできたライフスタイルにあるようです。

「好き」を追い求めた半生
編集部:音楽をされているとお聞きしました。小倉さんのこれまでとは。

小倉:音楽は中学時代に長渕剛やかぐや姫など弾き語りがブームになり、ギターに興味を持ってからです。高校に入ると友人たちとバンド活動をしていました。卒業してからは、北海道・礼文島の民宿でヘルパーをしたり、スイスの現地ガイドとして住み込みで働いたり、バックパッカーをしながら国内外をあちこち旅していましたね。大好きな旅の傍らにはいつも音楽がありました。

音楽は世界中にあります。スイスのヨーデル、イタリアのカンツォーネ、フランスのシャンソン、アメリカではジャズ、ブルース、カントリーなど、それぞれの国のソウルミュージックが存在します。現地で私も音楽を披露してみたのですが、どこの国でも「響く」と言ってもらえた曲があります。それは、「琵琶湖周航の歌」なんです。「聞いたことのないメロディー。ワルツのようなリズムでありながら哀愁がある。意味はわからないけどいい曲だね」と。音楽を通して、自分の日本人としてのアイデンティティーを改めて実感したものです。

旅行代理店の所長 もう一つの顔はアマチュアミュージシャン
編集部:現在の活動スタイルとは。

小倉:旅行業の合間に高校時代の友人たちと結成したバンド「Rag Time」を20年以上続けています。活動日は週に一度の土曜日。ウクレレ、アコースティックギター、ハーモニカを担当しています。たびたび音楽イベントのステージに立ち、自ら企画もしています。初回から実行委員として携わっている、地元・東近江の音楽フェスティバル「びわこジャズ東近江」は、今年4月に9回目を終え、国内外から220組ものアーティストが参加する大イベントになりました。

地域での開催は町の活性化にもつながると評価される一方で、騒音として受け取られる場合もあります。いろんな考えやご意見がありますが、常に「どうしたら開催できるか」という前向きな視点で考え、“好きな音楽をやらせていただいている”という姿勢を忘れていません。何よりの目的は、「一人でも多くの人たちと音楽の喜びを分かち合い、ジャンルにとらわれない音楽を共に楽しみたい」というその一心だからです。

「客席の笑顔が見え、お客さんとの一体感を感じると楽しくてたまらない」と小倉さん。お客さんの心に響く演奏ができたか、 それを追求し自分たちの音楽の質を上げることも楽しみの一つ。
「今が一番幸せ」あと一歩の勇気で人生が変わる
編集部:好きなことを追求されてきた小倉さんからのメッセージとは。

小倉:今の時代は良い楽器がたくさんあります。ある若者は、ブランドの楽器を持ち、家で練習しているので演奏も上手。それではと一緒にセッションしてみると、全然できない。人と合わせて演奏したことがないからです。人と共感、共鳴する楽しさを知らないなんてもったいない。やるなら、勇気を出して演者として発表のステージに立ってほしいですね。

ジャズフェスを開催したあと、あるご年配の方からお便りをいただきました。“さまざまな事情で音楽から離れていたけれど、アマチュアミュージシャンたちの楽しそうな様子を見て、しまい込んでいたトランペットを出した”と。その方は、翌年のジャズフェスに演者として出場していました。こんなうれしいことはないですよね。

「見るだけ」ということから、勇気を出して一歩踏み出してもらいたいです。それは音楽にとどまらず、スポーツ、芸術、文化などどれにも当てはまることではないでしょうか。自分で挑戦し、切磋琢磨して発表の場をもつことが、どれほど人生を豊かにすることか。上手、下手ではないんです。やってみて得られる幸せが必ずあるんです。

これまで、「音楽」と「旅」という好きなことを通じて、さまざまな人たちとの刺激的な出会いやつながりが生まれました。そんな積み上げのある今が、僕は一番幸せです。これからも夢は尽きません。

「何事もいろんなガイドや予備知識を持たないで、真っ白な状態で挑戦してみる方がいい。 そうすることで自分の尺度で物事を感じられる」

~びわこジャズ東近江~

普段の街並みがステージです♪
八日市駅前から東近江市役所へ向かう並木道(駅前グリーンロード)を中心に、ビルの入口や商店の軒先、公園、広場などがその日だけのステージとなります。

毎年4月後半に2日間開催されます

取材:2017年6月

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