介護保険に「疑問」 自宅再建で手すり設置、申請できず 益城町の夫婦

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 自費で設置した手すりの横で「被災者にとって本当に必要な支援策を考えてほしい」と話す片岡凉一さん(左)とみつ子さん夫婦=益城町

 熊本地震で自宅が全壊した熊本県益城町辻の城の片岡凉一さん(68)は2017年に自宅を再建し、震災前と同じように廊下や玄関、風呂場に手すりを取り付けた。妻みつ子さん(71)は関節リウマチで両膝に人工関節を入れており「要介護1」。設置費用の一部は介護保険を利用しようと考えていたが、地震前に給付を受けていることを理由に申請を断られた。片岡さんは「好きで自宅を新築したわけじゃないのに…。これからの被災者のために声を上げたい」と、制度の運用に疑問を投げ掛ける。

 介護保険を使った住宅改修は、要支援・要介護認定を受けた人の住宅に、手すりの取り付けや段差解消など6種類の改修をする場合が対象。改修費の上限は1人当たり20万円で最大9割を給付する。要支援・要介護の区分が3段階以上重くなったり、転居したりした場合は、20万円までの支給限度額が再度設定される。

 ただ、災害が理由でも片岡さんのように元の場所で自宅を再建した人は対象外。たとえ申請できても審査があり、必ずしも給付を受けられるわけではない。だが、転居なら再申請できるが、現地再建ではそれすらできないため、「冷たさを感じる」と片岡さん。結局、手すり設置費用は貯金していた退職金を充て、全額自己負担した。

 町福祉課は「改修を対象とする制度の性質上、新築での申請を受け付けるのは難しい」と説明。「ケースに応じて柔軟に対応したい」というものの、自宅を現地で再建すると事実上の“門前払い”となっている。

 被災者には、金銭面でさまざまな負担がのしかかる。片岡さんは「私と同じような境遇の人が、設置を我慢するようなケースがあるとしたら好ましくない」と訴える。

 県介護支援専門員協会(熊本市)は「被災した場合は特例として、住宅改修や特定福祉用具の購入費用などをあらためて申請できる制度上の環境整備が必要なのではないか。被災者と共に考え、向き合っていくべき課題だ」と受け止める。

 「被災者となって初めて、さまざまな法律や制度に疑問を感じるようになった」と片岡さん。「支援からこぼれ落ちてしまう被災者の声に耳を傾け続けてほしい」と訴える。(立石真一)

(2019年4月15日付 熊本日日新聞朝刊掲載)