近江日野商人のまち「日野」
天下人たちに一目を置かれ商業の礎を築いた蒲生氏郷。
早くから会員数400を超える商人組合を組織し行商先で成功して郷里に富をもたらした日野商人の歴史を追って。
時代を越えて魅了 古代万葉ロマン
滋賀県の南東部、鈴鹿山脈の西側に位置する蒲生野。古代から稲作が盛んで、今でものどかな田園風景が広がっています。遥か万葉の時代、蒲生野を舞台とした相聞歌(互いに詠み交わされた歌・恋歌)が詠まれました。歌の背景には、才色兼備の女性と伝えられる歌人・額田王をめぐって、中大兄皇子(天智天皇)とその弟の大海人皇子(天武天皇)が争っているのでは、というあまりにドラマチックな様子が浮かび上がります。そのため、解釈には諸説あるとしても幾多の時代を越えて多くの人々を引き付け、ロマンをかきたててきました。現代でも著名な小説家たちが額田王をテーマにした作品を描き、宝塚歌劇団ではこの恋歌を舞台化しています。
商人の隆盛、今に伝え 独自の文化残る「日野」
戦国時代、織田信長の娘を妻にし、豊臣秀吉に認められた日野城主・蒲生氏郷は、城下で楽市楽座を開き、商業を盛んにしました。江戸時代に入ると、日野では特産品の日野椀や薬を商材に商人たちが関東の小都市へ行商に出かけます。財をなした商人は、現地で酒や醤油などの醸造業を立ち上げ、郷里の日野には家族を住まわせる邸宅を築きました。
そのうちの一軒・山中兵右衛門の本宅は現在、日野町歴史民俗資料館「近江日野商人館」になっています。「日野商人たちが残した家訓は、現代にも通じる商いの心得。そのため、今でも大企業の研修がこちらで行われています」と館長の満田良順さん。
毎年5月3日に行われる「日野祭」の様子は、日野商人たちが持ち込んだ関東文化の影響を受けているとのこと。家にいながら祭りを眺められるようにと、多くの家で「桟敷窓」が設けられるなど、ここにしかない文化が息づいています。
これからの季節、日野のまちは花々に彩られます。日野にしかない文化にふれ、美しい花を鑑賞しに訪れてみては。
―大人の探訪スポット―
蒲生野周辺では有名な万葉集の恋歌にちなんだ
観光スポットが整備され、
「蒲生野万葉まつり」(9月)や歌会茶会など
万葉の歴史にあやかったイベントが開催されています。
・01 ~万葉集の有名な恋歌の歌碑(万葉の森 船岡山)~
・02 ~額田王・源義経ゆかりの地~
・03 ~近江日野商人館(旧 山中兵右衛門邸)~
・04 ~滋賀県指定無形民俗文化財「日野祭」・桟敷窓~
取材:2017年3月