『愛がなんだ』 恋って、息苦しくてめちゃくちゃカッコ悪いもの

(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

 第31回東京国際映画祭でコンペティション部門に出品され高い評価を集めた本作は、角田光代の原作を、岸井ゆきのと成田凌で映画化。一目惚れしたマモちゃんに、真っ直ぐにぶつかっていくアラサー女子のテルコと、彼女を取り巻く友人たちの姿を描いた作品です。監督は、映画『パンとバスと2度目のハツコイ』などで、<答えのない恋愛>を描き、日本の恋愛映画界の革命児として注目されている今泉力哉。

 自分の時間の全てを一目惚れしたマモちゃんに捧げてしまうテルコは痛々しくも「分かるよ!」と声をかけたくなる存在。好きになると猪突猛進、どんなダメ男だろうが一直線にぶつかって大事故を引き起こす自分の姿を見ているようで、胸が痛いわ、悲しいわ、それでいて笑えてくるわで気持ちが大混乱でしたよ。いつだって携帯電話を握りしめながら、まだかまだかと相手からの連絡を待っている時、実はその相手なんて自分のことを一ミリも思い出してない圧倒的なズレ感はすごく残酷で、自分の好きと、相手の気持ちが全く合わない時のもどかしさ、空回りしている温度感を二人の役者がとてもよく表現しています。

 日本全国をのぞいてみたら、たくさんの人が誰かを好きになり、恋にやぶれ、泣いたりわめいたり、めちゃくちゃダサいことしちゃったり。誰かのことを、友達も家族も仕事も全部どうでもよくなっちゃうほど好きになったことがあるならば、この映画のヒロイン・テルコに共感できるはずです。★★★★☆(森田真帆)

監督:今泉力哉

出演:岸井ゆきの、成田凌

4月19日(金)から全国公開

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