半分以上が宇宙へ。流星の衝突によって月面の「水」が散逸していることをNASAの探査機がキャッチ

もともと少ない水が、今も減り続けているようです。ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の研究者たちは、月の地表に埋もれている「水(HO)」や「水酸基(OH)」が月面に衝突した流星によって巻き上げられ、その多くが宇宙へと逃げ出してしまうことを明らかにしました。

研究者たちが利用したのは、NASAの月周回衛星「LADEE」のデータです。2013年9月に打ち上げられたLADEEの任務は、月の希薄な大気や流星の衝突によって巻き上げられた塵などを観測すること。運用期間は打ち上げ翌年の4月までという短いものでしたが、その間に水または水酸基による蒸気を検出しました。

月面の「水」(HOやOH)は、地表からの深さ8cm以上のところで「レゴリス」と呼ばれる砂や粉塵に付着していると考えられていますが、その量はとてもわずか。発表では、月で16オンス(およそ450グラム)の水を手に入れるには、1トン以上のレゴリスを処理しなければならないとされています。

月面では大変貴重な水ですが、地表下のレゴリスを掘り起こして蒸気を拡散させるのに必要な流星のサイズは、たったの直径5mm。BB弾ほどのサイズの微小天体が衝突しただけでも月の水は希薄な大気中に舞い上がってしまい、そのうち3分の1は再び月面に戻ってきますが、残る3分の2は月の引力を脱出して逃げ出してしまうこともわかりました。

衝突する流星のほうも水を含んでいるので、検出された水が必ずしも月面から放出されたとは言えないかもしれません。しかし、同大学のDana Hurley氏によれば、放出される水のほうが流星のもたらす水よりも多いため、少なくともその一部は月に由来すると判断できるとのこと。

月の水に関する研究は、その起源や分布状況を明らかにし、早ければ2024年にも再開される可能性が見えてきた将来の有人月面探査にも役立てられるはずです。

Image credit: NASA/Goddard/Conceptual Image Lab
https://www.nasa.gov/press-release/goddard/2019/ladee-lunar-water
文/松村武宏

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