ダイド『スティル・オン・マイ・マインド』 自然体で偽りのない心模様を歌う

ダイド『スティル・オン・マイ・マインド』

 1971年ロンドン生まれの47歳。4000万枚のアルバム・セールスを誇る、イギリスを代表するシンガー・ソングライター、ダイド6年ぶりのニューアルバムです。1999年、アルバム『ノー・エンジェル』でソロデビュー、エミネムが収録曲の「サンキュー」をサンプリングしたことがきっかけでブレイクしました。パーソナルな詞を切々と歌うスタイルはアデルにも似ていますが、よりフォークを源流としたイギリスのヴォーカル・スタイルを彼女に感じます。

 ここで歌われるのは日常の生活に見いだす心の愛、真実そして平和、まさに大人のラヴ・ソングと言えます。ハイライトは母親の子に対する究極の愛を歌った「ハフ・トゥ・ステイ」でしょう。さて兄ロロと共に自宅のソファーで録音したと言うこの作品、やはり兄のフィニアスと共に自宅のベッドルームで制作したビリー・アイリッシュの作品との共通点を感じます。共に大物プロデューサーを起用せずパーソナルな環境で偽らぬ心を表現した傑作といえます。(ワーナーミュージック・1980円+税)=北澤孝

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