「ストライクゾーンで勝負」―無四球完封のロッテ涌井、西武戦で得た“気づき”

ロッテ・涌井秀章【写真:荒川祐史】

チームの連敗を止める快投劇「どうせランナーを出すのなら、四球よりヒットの方がいい」

■ロッテ 6-0 ソフトバンク(16日・ZOZOマリン)

 投打がかみ合わず4連敗中だったロッテ。負の流れを止めたのは今季からエースナンバーを背負うベテラン右腕の投球だった。

 16日から首位ソフトバンクとのホーム3連戦を迎えたロッテ。その初戦を任された涌井は初回、いきなり1番・牧原に安打を許した。しかし、相手の走塁ミスもあり無失点で終えると、それ以降は低めの直球を中心にソフトバンク打線を9回2安打無失点。終わってみれば、自身9年ぶりの無四球完封でチームに勝利を呼び込んだ。

 完封劇の布石は今季初登板となった4月2日の西武戦での“気づき”にあったと涌井は言う。

「最初の西武戦の時に、コースを狙ってカウントが不利になることが結構あったので、前回から『どうせランナーを出すのなら、四球よりヒットの方がいい』と、昔に戻ってストライクゾーンで勝負するっていうことを前回(4月9日・オリックス戦)も、今日もできていた」

「ストライクゾーンで勝負する――」

 西武、そしてロッテのエースとしてチームを牽引し続けてきたプロ15年目右腕が、古巣・西武との試合で自らの投球の原点に立ち返るきっかけを得ていた。

 好投の要因はもう一つ。「真っ直ぐのキレが非常に良かった」と井口監督が評価したストレートだ。「ストレートを低めに投げられたっていうのが好投の一番の要因だと思います」。涌井自身もこの日最速146キロを記録した直球を“勝因”に挙げていた。

次回登板も本拠地「また9回投げ切りたいと思います」

 そんな涌井に文字通り”追い風”も吹いていた。「結構、風も投げやすい風だったので、それをうまく使いながら(投げました)」。東京湾から吹き込んでくる本拠地・ZOZOマリンスタジアム特有の風が、この日は涌井に味方した。

「低めに、抑えつけるように投げれば(ボールが)浮くというのがあるので」

 外野側から吹き込む風がバックネットにぶつかり、グラウンド上ではホームから外野方向へと風向きが逆になることが多いZOZOマリン。涌井の言うように、低めに投じたボールがバッターに到達する時に浮き上がるような形となり「ちょっと向こうの打線が差し込まれたりしていたと思う」と、地の利も最大限に生かした完封劇だった。

 井口監督も「週頭の試合で勝てると波に乗りやすい」と涌井の好投を評価し、背番号18は「火曜にピッチャーを使うと後々中継ぎもきつくなると思うので、できる限り長いイニングを任されればいいなと思いますし、それを続けていければ」と、ここまで奮投しているリリーフ陣への気遣いも見せた。

「次も千葉なので、また9回投げ切りたいと思います。頑張ります」と、お立ち台で語った涌井。「まさか、最後までランナー出さずに行けるとは思っていなかったですけど、しっかり仕事ができたかなと、久しぶりに。今日は満足です」と淡々とした口調で、勝利の喜びを語っていた。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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