小値賀町議選 定数割れ回避も懸念、注文 なり手不足深刻「行政監視機能甘くなる」

 定数8の小値賀町議選は午後4時すぎに8人目が立候補を届け出たことで、異例の“定数割れ”がギリギリで回避された。人口が約2400人と県内自治体では最も少なく、高齢化も進む同町。今後、なり手不足はより深刻になるとみられ、有権者からは「行政のチェック機能が十分に果たせるか心配」と懸念や注文が聞かれた。
 3月にあった立候補予定者説明会には7陣営しか参加せず、16日も午前中に7人が立候補を届け出ただけで、定数割れの公算が大きいとみられていた。事態が動いたのは立候補の受理締め切り直前の午後4時すぎ。「定数割れで有名になれば、小値賀の恥」とする元職の男性が手続きを済ませ、急転直下で回避された。当日に出馬を決めたため、選挙カーやポスターは用意していなかったという。
 町民からは、なり手不足の要因の一つに、議員報酬の低さも上がる。同町の町議1人当たりの月額報酬は18万円で、県内議会では最低。昨秋、現職から立候補の打診を受けたという50代男性は「無投票は好ましくないとも思ったが、本業との両立は厳しい。収入が減った分を議員報酬でカバーできない」と辞退した理由を明かす。
 同町議会は若手の参画を促そうと、2015年3月、満50歳以下に限り、月額報酬を30万円に引き上げる条例案を可決。だが、「金目当ての立候補と見られ、逆に足かせになる」などの声が町民から上がり、18年3月、対象者はいないまま廃止となった経緯がある。
 今回の当選者は70代4人と60代が3人で、50代は1人。女性はいない。全国町村議会議長会によると、11年4月1日から17年7月1日までの間に行われた全国927町村議選のうち、10町村議選で定数に満たないまま無投票当選になったケースがあったという。人口減、高齢化の中、同町でもなり手不足は今後、より深刻になるとみられ、現職の一人は「次回の選挙に向け、若手など後継者探しも進めなければならない」と複雑な表情を見せた。
 こうした事態に、町民からは「議員の数が足りなければ、行政をチェックする機能が甘くなる。若い人が出馬するなどして、有権者が政策の中身で候補者を選べる機会が必要」(50代の会社員男性)との声も上がる。30代主婦は「議員が普段何をしているか分かりづらい。議会が開かれているとき以外の仕事も町民に伝えてほしい」と求めた。
 地方自治に詳しい龍谷大の土山希美枝教授(公共政策論)は「なり手不足に危機感を持って住民と対話した自治体では候補者が増えた例もあり、小値賀も改革の取り組みに応える立候補者が出たのかもしれない。ただ、次回は分からない。今後も議会の成果と重要性を伝える努力が必要だ」と話した。

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