意識の変化が東京大会のレガシーに パラ開閉会式は伝統と革新の融合を

応援チャリティーソングの売上金を寄付する式典で記念撮影する(左から)稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さん、(1人おいて)IPCのパーソンズ会長。右端はボッチャの杉村英孝選手=2018年7月、東京都内

 国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドルー・パーソンズ会長(42)=ブラジル=が共同通信の電話インタビューに応じ、13日で開幕まで500日となった東京パラリンピックの最も重要なレガシー(遺産)として「障害がある人に対する意識の変化」を挙げた。2016年リオデジャネイロ大会の経験を踏まえ「ホテルや公共交通機関のバリアフリー化も大事だが、それ以上にパラリンピックを通してこうした人々の見方が変わることが日本社会全体の変革につながるだろう」と期待した。(共同通信=田村崇仁)

 ―大会成功の鍵は。  

「チケット戦略は大切だ。ソーシャルメディアを通じて若者を巻き込み、日本の選手を会場で直接観戦する機運を高める仕掛けが重要だろう。日本は史上最高の大会になる可能性があるが、どの会場も満席にするのは簡単でない。入場券は幅広い価格設定で全競技、全会場の満員を目標に掲げている。東京の販売戦略は五輪と同様、非常に良いが、さらにロンドンのマーケティング戦略を見習って競技の認知度や選手への関心を高め、教育的価値も訴えて、子どもから高齢者まで幅広い世代の戦略が必要になる」

 ―東京大会の開閉会式に期待することは。

 「日本は世界でもユニークな歴史と特徴を持つ国だ。伝統芸能とポップカルチャー、テクノロジーの融合を今からとても楽しみにしている。アニメキャラクターが出てくるかもしれない。スペクタクルな式典になる」

国際パラリンピック委員会のアンドルー・パーソンズ会長(IPC提供)

 ―北朝鮮の参加は。

 「韓国、北朝鮮の南北合同チーム結成は前向きに進んでいる。近く両国の国内パラリンピック委員会(NPC)と3者協議を開き、本格的な検討に入る計画だ。実現すれば、夏冬のパラリンピックを通じて史上初めて。予選のプロセスやチーム競技で実現の可能性があるかなど、詳細を詰める必要がある。3者協議で合意すれば公表したい」

 ―リオ大会は世界記録が200を超えた。各国の選手強化と技術革新で競技力向上も著しい。

 「東京ではさらに世界記録が出ることを期待したい。世界選手権でも記録は伸びている。日本はリオ大会で金メダルゼロに終わったが、総メダル数は増えている。東京では必ず金が取れる」

 ―バリアフリー対策の進捗状況はどうか。

 「どの大会も課題は当然ある。アクセシビリティー(利用しやすさ)の指針を踏まえ設計される選手村は心配ないが、特に車いす利用者を想定したバリアフリー対応のホテル不足や交通機関は改善が必要だ。これは政府や東京都と連携して取り組んでおり、基準の改正がレガシーになる」

 ―聖火リレーのトーチデザインも発表された。

 「桜の花をモチーフに色と形が本当に美しい。全国各地で採火するアイデアも素晴らしく、盛り上がりに期待したい。聖火ランナー? それは自分で決められないけど、そんなチャンスがもしあれば最高に光栄だ」

アンドルー・パーソンズ氏(ブラジル)国際パラリンピック委員会(IPC)副会長、ブラジル・パラリンピック委員会会長などを務め、南米初開催の2016年リオデジャネイロ大会を成功に導いた。17年9月のIPC総会でクレーブン氏(英国)の後を継いで第3代会長に就任。20年東京大会の準備状況を確認する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会の委員でもある。42歳。

国際パラリンピック委員会のアンドルー・パーソンズ会長(ゲッティ=共同)

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