獅子の魂胸に 再度の海外プレー目指す寺尾勇利 H.C.栃木日光アイスバックスを退団

 地元・日光出身の主力選手として人気、実力を兼ね備えた存在だったH.C.栃木日光アイスバックスのFW寺尾勇利がチーム退団を決め、再び海外を目指す。「挑戦するなら1年でも早く」という熱い思いや、不完全燃焼に終わったバックスでの2018―19シーズンなどを語った。

「今シーズンが始まる前から、(シーズン終了後の)海外挑戦は決めていました」。

 その表情はどこかつきものが取れたようにも見えた。今年24歳となる寺尾にとって、年齢が決断のポイントとなった。

「25歳を過ぎると(海外挑戦も)厳しくなる。アイスホッケー人生は一度きり。挑戦するなら1年でも早い方がよかった」と言い切る。

 バックスで通算4季目となった18―19シーズンは苦悩のシーズンだった。

 ケガで出遅れたものの、開幕8試合目で復帰すると、復帰3試合目となる10月6日の王子イーグルス戦でシーズン初ゴールを決めた。その後もゴール、アシストを続け、前半戦はチーム史上初の8連勝にも貢献した。

 しかしチームは11月15日の王子戦で0―7の大敗を喫すると、そこからズルズルと7連敗。その後も負の流れを断ち切ることができず、8チーム中7位に終わりプレーオフ進出を逃した。

 「なあなあな感じでシーズンが終わってしまった。チームとしても懸ける気持ちが足りなかったように思う」と悔しさをにじませる。

 シーズン通算でチーム3位の23ポイントを挙げるなど決して調子は悪くなかったものの、3、4セット目で出場することも多く、起用法でも消化不良のシーズンとなった。

「(アリペッカ・シッキネン)監督からはチームにフィットすることを求められたが『何をするか分からないプレー』が自分の持ち味。昨シーズンまで、それが相手にも脅威になっていたはずなのに…」

過酷な環境にも臆さず

  「海外挑戦は小さい頃からの夢であり目標」とかねてから公言する通り、プロ2年目の15―16シーズンには早くも米ジュニアリーグ「ユナイテッドステイツホッケーリーグ(USHL)」に挑戦し、同リーグ所属のウォータールー・ブラックホークスのトライアウトを通過。レギュラー、プレーオフ通算54試合に出場し、21ゴール、25アシストと活躍した。

 シーズン中は10時間以上のバス移動や、遠征で1週間以上、ホームタウンに戻らないことが続くなど過酷な環境だったが「気を張ってると、かえって体調を崩さないんですよ。死にもの狂いだったから。メンタルは強くなったと思う」と屈託なく笑う。

 「最先端のアイスホッケーを経験したことで、自分の中でも成長を感じることができた。ぶつかった時のタイミングのずらし方など、フィジカルのハンディをカバーする技術などが身に付いた」と振り返る。

 勝利だけでなく、上部リーグのスカウトの目に留まるようなアピールも必要とされた。

 チーム内にライバル意識や嫉妬も渦巻く空気の中、ひたむきにプレーを続けた。それだけにチームやアジアリーグが置かれている環境に、甘さや物足りなさを感じることもあった。

9月のトライアウト視野に

 「今はニートですから」と自嘲気味に笑う。地元・日光などで自主トレを重ねながら、北米や欧州のトライアウトが本格化する9月に備える。

 北米ならNHL傘下、欧州なら世界トップ10に入るような国のリーグでプレーすることが目標だ。

 容易でないことは重々承知だが「米国でプレーしていたときのコネクションもあるので、最大限利用して、いろんな人を巻き込んで狙っていきたい」と目を輝かせる。

 再びハードな環境に身を置くことになるが「海外でできることがが一番。不安は何もない」と迷いはない。

 元アイスホッケー選手で、海外プレー経験もある父、一彦さんの影響も大きいという。

「おやじからも『早く行った方いい』と言われている。30歳くらいまではたとえ下部リーグでも海外でプレーしたい。最後は親孝行で日本でプレーすると思うけど」

「気高くさせてくれた」ファンに感謝

 退団したものの、日光出身の寺尾にとって、それでもバックスは特別なチームだ。

 「新人で入団したときの、地元ファンの自分に対する期待の熱量は感じていた。自分も日光出身の寺尾勇利ということを意識していた部分もある。自分を気高くさせてくれたというか。一番はファンにありがとうという気持ち」と感謝の思いを強調する。

 来季に巻き返しを期すチームに対しては「リーグ優勝、全日本選手権優勝を目指してほしい。自分がいなくなって強くなるのは複雑な思いもあるが(笑)」とエールを贈る。

 米国でのプレー時、その誇り高く、闘志あふれるプレースタイルから、当時の指揮官から常に「ハートオブライオン」と呼ばれた。

 獅子の魂を胸に抱き、新たなステージに挑む。

 

てらお・ゆうり

1995年4月29日生まれ、日光市出身。171㎝、78㎏。日光東中→駒澤大学附属苫小牧高校→H.C.栃木日光アイスバックス→ウォータールー・ブラックホークス(USHL)→アイスバックス。

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