<金口木舌>桜の美の裏側

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 春の訪れを告げる桜。今年は花冷えが続き、花見の時期も長かった。各所で薄桃色の花が咲き誇り、日本人や外国人観光客が記念撮影する姿が目立った

▼沖縄ではヒカンザクラだが、本土で桜と言えばソメイヨシノ。散り際の桜吹雪も情緒があり、淡い桜の色にはかなさも感じる。だがかつては花見の桜といえばヤマザクラだった

▼ヤマザクラとは山に咲くサクラというより品種名だ。奈良県吉野町の山に咲くシロヤマザクラ。緑樹に交じって白色や淡紅色の花が見事に彩るさまは全国的に有名だ

▼今は誰もが知っているソメイヨシノだが、実は明治から東京の染井村の植木屋が売り出した。韓国の済州島が起源とする説もあったが、最近は遺伝子情報からもエドヒガンとオオシマザクラの雑種で、別系統として学問的に整理されている

▼植物を探し大正期に沖縄も訪れたプラントハンターの英国人アーネスト・ヘンリー・ウィルソンは既に日本踏査時にソメイヨシノの起源をその形態から見抜いていた。東京上野の国立科学博物館で開催中のウィルソンの写真展でも東京周辺のサクラとともに紹介されている

▼開花予測の指標になっているソメイヨシノは接ぎ木で全国に広まった。日露戦争の戦勝記念で植栽が呼び掛けられた経緯もある。はらはら舞う花びらは美しいが、軍国主義の名の下に散る桜は二度とごめんだ。