回転自在、世界に挑む 21日、ラート世界大会国内初開催

国内初開催の世界大会で主将を務める森=東海大

 2本の大きな輪を操り、変幻自在に体を動かす体操競技「ラート」の「第9回世界ラートチームカップ」が21日、秋田県立体育館で行われる。世界大会は国内初開催となり、日本代表チームの主将を務める森大輔(39)=横浜市南区出身=は、競技の普及も念頭に「見ている人が笑顔になるような演技がしたい」と自然体で臨む。

競技普及へ伸び伸び演技

日本代表チーム主将 森 大輔(横浜市出身)

 ドイツ発祥のラートは高さ約2メートル、重さ約30キロの鉄製リングの中に入り、直転、斜転、跳躍の3種目で回転中の技の難易度や完成度を競う採点方式の体操競技。今大会は4カ国が団体戦で争う世界一決定戦で、日本は昨年5月の世界選手権で出場権を獲得していた。

 国内、そしてアジアでも初開催。ホームで迎える日本代表チームの主将を務める森は、港南台高(現・横浜栄高)から進んだ筑波大時代にラートを始めた。卒業後は大手電気機器メーカーで半導体の材料研究に携わっており、2008年には子どもたちに教えるために東京・多摩地区で「たまラートクラブ」を設立。選手、指導者として競技の普及に尽力してきた。

 「日本での開催で会場もどんな雰囲気になるか。ドキドキ、ワクワクしています」と穏やかな笑みを浮かべる森は、他国を見渡しても少ないという39歳の大ベテラン。今大会はその実力とチームをまとめる統率力を買われて声が掛かった。

 日本は森も貢献した14年世界チームカップで優勝経験があり、18年の世界選手権で高橋靖彦(33)が史上最多の3度目の個人総合優勝を成し遂げるなど、世界的にレベルが高い。その理由を森は「(欧米選手と比較し)まず体格差が影響しないことと、日本では大学から興味を持って始める人がいるから」とみている。代表チームには元野球選手や元バドミントン選手らがおり、森自身、高校時代は剣道に打ち込んでいた。競技転向後も、培った身体能力が生かされているのだ。

 これに加え、森が子どもたち相手にクラブで指導を続けるように、幼少期から「ラート一筋」のジュニア世代が台頭し、現世代と融合し始めた「過渡期にある」という。

 一方で競技人口の推移は横ばい状態という。日本ラート協会の年間会員者は約150人。ラート教室は関東エリアでも4、5カ所ほどで、器具の運搬に手間がかかり、練習場所の確保も容易ではない。だからこそ、今大会で脚光を浴びて普及につながることを期待する。

 ラートは新体操のように音楽に合わせ優雅に回るのも特徴だが、演技中は息を切らせる過酷さも同居する。3次元の難しい動きでリングを駆使しながらも姿勢は直立状態をキープ。「インナーマッスルなど体幹を鍛え、的確な動きをすればきれいに回る」と言う森は、研究者らしく「理にかなった動き」を常に意識し、精度を高めていく。

 クラブの教え子たちも駆け付ける今大会は、これまでの足跡を形にする集大成になる。

 「やっぱり、見ている人に笑顔になってもらいたい。ストイックに自分を追い込むというよりも、伸び伸びとした演技を見てもらえれば」。それは、森が日頃から子供たちに伝えていることでもある。世界の舞台でラートの神髄を披露する。

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