弱い立場の人を狙い、つけこむ卑劣なセクハラ

教育実習、選挙活動、就活中にも…

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「いま、つながろう セクハラのない社会へ」の参加者ら

 息をのみ、天を仰ぐ。これほどひどいのか―。日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)主催の「いま、つながろう セクハラのない社会へ」が4月15日、衆院第1議員会館で開かれた。教育や介護、政治の現場で、就職活動の中で、セクシュアルハラスメントが日常的に起きている。職種を超えた十数人が報告した被害実態を聞き、セクハラは弱い立場の人を狙い、つけこむ行為だと改めて感じた。その卑劣さ、醜悪さに、何度も打ちのめされそうになった。(共同通信=田村文)

  「教育実習を受けさせてほしいと学校に依頼にいった学生が、校長から性関係を迫られ、受け入れれば実習をさせてやると言われた。職員室での発言で、多くの先生が聞いていたはずなのに、みな知らんふりをした。学生は別の学校で実習を受けて教育免許を取ったが、採用試験は受けなかった。教員になる夢を諦めたのです」

 川村学園女子大教授の内海﨑貴子さんの報告は、衝撃的な話から始まった。この訴えを受けて“実習セクハラ”の実態調査をした結果、あらゆる時期、あらゆる場面で起きていた。実習期間中、事前ガイダンスや事後指導のとき、飲み会やSNS…。「実習生と指導教員は強力な権力関係にあり、教員側の加害者意識が低い」。そう内海﨑さんは分析する。

 ▽候補を襲う票ハラ

 “票ハラ”という言葉も飛び出した。女性議員に対する男性有権者によるハラスメントのことだ。昨年2月、東京都の町田市議選で初当選した東友美さん。「ふつうの会社員」だった東さんが街頭に立ったとき、どんなことが起きたのか。

 男性通行人と握手をすると、手をなでまわされる。手がどんどん上に滑ってきて脇まで触られる。酔っ払いに抱きつかれる。当選後、男性支援者と喫茶店で会った際には数十分間、罵声を浴びせられた。

 夜中の電話で「今からおれのところに来ないと、支援をやめるぞ」と言われたり、知らない男性に呼び止められて性体験を聞かされたり。フェイスブックでは、男性からの友達申請が毎日100件を超え、出会い目的のメッセージが頻繁に届いた。

 「議員という立場上、全てをチェックしなければならない。議員は有権者をむげにできません。それにつけ込んでくる。身体的なセクハラのほか、誹謗中傷も多い。しつこくメールを送ってきて、精神的な支配下に置こうとする傾向もある。議員になって2カ月後、急性膵炎を発症しました。多くの地方議員には秘書がいません。一人で対応しなければならない」

集会で発言する東友美さん

 ▽当選後は同僚議員から

 各政党が女性議員を増やそうとしているが、これらの問題を解決しない限り、積極的に2期目に挑戦しようという女性議員は少ないと、東さんはみる。「大きな決断をして社会貢献をするべく立ち上がった女性議員たちを、個人的な欲望で消耗していく男性がいる。許せません」

 そんなつらい経験をへて当選した女性議員が議会に入るとどうなるのか。全国フェミニスト議員連盟、八王子市議の陣内やすこさんが報告した。

 2014年に東京の議員などを対象にした性差別体験アンケートによると、回答した143人のうち過半数の74人が、被害体験が「ある」と答えた。被害の頻度は「数えきれないくらい」が13人も。女性議員が1人しかいない自治体での被害体験率は75%にも上る。

 女性が少ない議会の控室で、男性議員が肩を触ってきた。男性議員同士で「あれはセクハラかな」「本人が喜んでいるんだからセクハラじゃないだろう」と笑い合う。そんな「集団セクハラ」もあるという。

 「セックスがしたくて男を誘っているんだろう」「女性議員には子宮がないんだろう」「きつい質問してかわいくない女だな」。男性からの言葉には救いが全くない。

 ▽閉じ込めた怒りや悲しみ

 就活生へのセクハラの報告は、とりわけつらかった。

 ニュースサイト「ビジネスインサイダージャパン」は今年2月から、「就活セクハラ緊急アンケート」を始め、すでに男女616人から回答を得ているという。同サイトの記者、竹下郁子さんによると、就職活動中にセクハラにあったことがあるのは約半数の306人。被害に遭った状況として最も多かったのは「OB訪問」で143人。次は「面接中」で94人、「インターンシップ」が79人。

 「自分の就活の時のノートを見せるという口実で家に誘われ、そのまま大量に酒を飲まされた。意識がはっきりしない状態で体を触られ、体に点数をつけられ、人格を否定するような言葉もたくさん言われ…。このセクハラが原因でまともに就活できなかった。何度死にたいと思ったことか」。そんな犯罪としか言えないような事例まであったという。

 被害に遭った人の7割以上が誰にも相談していない。相談しない理由は「社会的な立場が圧倒的に低い自分にとって相談することで何が起こるか想像できず、報復も怖かった」など。どうにもならない力関係の中で、口をつぐまざるをえない学生たちの閉じ込めた怒りや悲しみを想像すると、たまらない気持ちになる。

 会の後半、弁護士や国会議員、ジャーナリストらが発言した。いまだにこの国にセクハラを明確に禁止する法律がないこと。性暴力にかかわる無罪判決が続いていること。被害を訴えた女性がひどいバッシングを受けていること…。嘆き、悲しみ、憤った。

 しかし、財務事務次官(当時)によるセクハラを女性記者が告発して1年たったいま、何も変わっていないわけではない。「被害を被害として捉えられるようになってきた」という意見もあった。実際に、告発する人たちも増えている。

 告発という“問題提起”は先行世代に投げかけられている。希望を胸に社会へ飛び立とうとしている就活生や教育実習生、女性の社会参加の道を自ら押し広げようとする女性議員らを、絶望の淵に追いやるような被害を放置していいはずがない。大人社会全体の責任として、もう終わりにしなければならない。