スニーカーで行ける!「まずはここから」な登山入門コース10選 これから登山を始めてみたいと思っているアナタ!そんな方々にぜひとも歩いてみて欲しい、スニーカーでも歩けるポクポク歩き系の山があるんです。当記事は『スニーカー登山』を推奨するものでは決してありませんが、どっしり・しっかりとした登山靴を保有していなくても、まずは山を歩いてみたい・登山を始めてみたいな、という方々に向け「歩き易さ」「心地良さ」「絶景」をキーワードにまとめました。ぜひ今後のハイク先の検討候補にしてみてはいかがでしょうか?

「山を歩いてみたい!」そんな方にぴったりの山あります

「登山」と聞くと、イメージするのはテレビなどで観るような「アイゼンやピッケルを使った危険たっぷりの雪山」だったり、「ヘルメットにハーネス、ロープで登る岩壁」だったりが思い出されますよね。 または「どっしりとした登山靴にとてつもなく大きいザックを背負って」ガシガシ歩く…。

そんな登山もモチロンあります。 でも、初めはもっとお手軽に「ハイキングしてみたい!」で良いのです。そんな人のために、しっかりとしたハイキングシューズ・登山靴を持っていなくても、お手持ちのスニーカーで行ける登山入門コースをご紹介します。

「スニーカーでOK」と言っても…

とはいえ「スニーカーなら何でもいい」という訳ではありません。上記左フォトのようなタウン用スニーカーはNGです。一番の理由は『滑りやすいから』。コンクリートの道を歩くわけではないので、凹凸の少ないソールは不整地を歩くには向いていないと言わざるを得ません。
お手持ちのシューズなら少なくともスポーツ用のスニーカー、できればソールが少し厚めでクッション性に優れ、ぶかぶかすぎないものが好ましいです。

それでは早速、お手軽ハイキングが楽しめる山々を紹介していきます!

【静岡】<達磨山> ここはゴルフ場?フェアウェイ続くご機嫌トレイル

達磨山は、西伊豆に位置する牧歌的風景が広がるたおやかな山。 だるま山高原レストハウス付近からの景色は、かの横山大観に「日本一の富士の展望地」と言わしめたとか。 メインの登山ルートは、だるま山高原レストハウスから南下するコースと、土肥(とい)駐車場や戸田(へだ)駐車場から北上するコースがあります。

前者は、まるでゴルフ場のフェアウェイのようなグリーンのトレイルが続き、ついつい気分が高揚してしまうコース。全行程を通して穏やかですが、一部、登り応えのある木の階段が続くため、しっかりと登った気分になれます。

今回紹介は後者のルートで、往復わずか1.2km程度と、お散歩コースでお手軽に楽しめ、子供から老人までどなたでも歩けます。 旧西伊豆スカイラインのドライブのついでに、といった楽しみ方も◎。 山頂からは秀麗:富士山、駿河湾と太平洋、西伊豆高原のダイナミックな風景が広がり、春の陽気に訪れれば、旅とハイクを一緒に楽しめすばらしい思い出になるでしょう。 なお、有名な天城山は「万二郎岳」「万三郎岳」から成りますが、ここ達磨山は「万太郎岳」の別名を持っています。

(※地図ポイント上、古稀山をS&G;にしていますが戸田Pはさらに達磨山寄り)

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  • 標高: 982m
  • 登山適期: 3月~11月
  • 出発&到着: 戸田駐車場

【長野】<鷲ヶ峰&八島ヶ原湿原> たくさんの花と蝶舞う平和な湿原

八島ヶ原湿原駐車場の鹿避けネットをくぐってすぐ、そこには平和な別天地が広がります。 八島ヶ原湿原は、長野県の八ヶ岳中信高原国定公園中部に位置し、いわゆる「霧ヶ峰」の一部です。 ここには、八島ヶ原湿原のほか、車山湿原、踊場湿原の3つの湿原があり、天然記念物に指定されています。 単に「八島湿原」と呼ばれることもあり、ハイカーのみならず、花好きな写真家、野鳥の会などのバードウォッチング愛好家のほか、ファミリーも多く訪れるスポットです。

さて、まずはルートを左に取りすぐそこの山頂、鷲ヶ峰を目指しましょう。 登るにつれ視界が開け、振り返ると大迫力の八ヶ岳の峰々が! 山頂からは360°のパノラマビューが楽しめるので小休止しつつ景色を楽しみましょう。

景色を存分に楽しんだら一旦取り付きまで下り、そこから八島ヶ原湿原をぐるりと一周お散歩してみましょう。 平和な湿原風景を眺めながら整備された木道をポクポク歩きますが、そこここにたくさんの花々が咲き乱れ、百花繚乱の様相です。 蜜を求め蝶たちも沢山舞っており、まさに別天地! また、全般を通しフラットなため苦なく歩け、幸せなお散歩を楽しめることでしょう。

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  • 標高: 1,798m
  • 登山適期: 4月~11月
  • 出発&到着: 八島ヶ原湿原駐車場

【山梨】<大菩薩嶺> 登山気分をしっかり味わえる富士山展望地

大菩薩嶺は老若男女に愛される名峰で、深田久弥選定の日本百名山のひとつ。 山梨県甲州市と丹波山村に跨る標高2,057mの山です。山頂は樹林に覆われ展望はありませんが、すぐそばにある「雷岩」は絶景スポットになっており、眼下に大菩薩湖、そしてその奥に美しい富士山が聳え、大パノラマで楽しめる絶景は筆舌に尽くしがたいものがあります。 南アルプスもずらりとそろい踏み、その景色は飽きることがありません。

また、コースは牧歌的な風景を有し、穏やかでたおやかな山容は、歩いているだけで幸せな気分になれます。 ルートは、福ちゃん荘を基点に右回り・左回りが選べ、どちら回りでも楽しく歩けること間違いなし!

(福ちゃん荘のきのこ汁)

さらに、登山口となる上日川峠を基点とし、わずか7kmのコース上に山小屋が3軒も点在し、いつでもドリンクや食事が摂れるという利便性と安心感もありがたいですね。 熱々のきのこ汁や山菜そば、うどんなど身体に染み入る美味しさです。 尚、右回りで雷岩~福ちゃん荘へと唐松尾根を下る場合は、わずかな区間ですが少し急な下りがあるので、トレッキングポールでバランス補助するなど充分に注意しましょう。

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  • 標高: 2,057m
  • 登山適期: 4月~12月
  • 出発&到着: 上日川峠駐車場

【奈良】<大台ヶ原> 年間400日雨が降る?晴れの日に行こう大台ケ原!

(山頂展望台より)

大台ヶ原山は、奈良県と三重県の県境にある牧歌的な山容が特徴の山で、こちらも深田久弥に選定された日本百名山のひとつ。 年間400日雨が降ると例えられるほど雨天が多く、晴れた日に行けたならそれだけでラッキーです! 大台ヶ原ビジターセンターから、まずは日出ヶ岳(大台ヶ原)を目指して歩きましょう。 山容は優しく、小さな子供連れのファミリーもたくさん。(子供やご老人への安全配慮は充分に!) 日出ヶ岳山頂には展望デッキがあるので登ってみましょう。 そこからは、これから歩く牧歌的な風景が広がっているはずです。

(霧氷した木々の中を歩く)

その後、正木ヶ原方面へとポクポク散歩を楽しみます。 広々とした視界と天空感、きれいに整備された木道、鳥の囀り、「フィーーーッ」という鹿の鳴き声も聞こえたりと、ユネスコパークに登録されているだけあって、自然の中に身を置いていることを実感できるでしょう。 尾鷲辻の分岐にてビジターセンターへ戻るも良し、そのまま牛石ヶ原と大蛇グラを経由し、ぐるり大回りで戻っても良いでしょう。 ビジターセンターにはお土産屋や食堂があるので、下山後の腹ごしらえも楽しめます。

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  • 標高: 1,695m
  • 登山適期: 4月~11月
  • 出発&到着: 大台ヶ原ビジターセンター

【長野】<飯盛山(めしもりやま)> お手軽に八ヶ岳の大絶景!

避暑地として有名な清里駅からほど近い飯盛山は、飯を盛ったように見えることからその山名がついています。 実際に行くと「ナルホド!」と思わずにはいられないほど、見事なライス大盛り状態です。

ここでは、平沢峠駐車場からの最短コースを紹介しますが、千ヶ滝~平沢間にも有料駐車場があり、平沢登山口からのルートも牧歌的な風景広がる開放感が楽しめるオススメコースです。

飯盛山の山頂付近は開けた草地の台地となっており、すぐそこに見える大迫力の八ヶ岳の雄姿はもちろん、瑞牆山や金峰山、南アルプス、富士山、浅間山なども望め、その展望は素晴らしいものがあります。 休憩は飯盛山のすぐ隣にある平盛山の草原に腰を下ろし、ゆっくりとお弁当など食べてみてはいかが? また、花のシーズンは、ニッコウキスゲやマツムシソウなど、自然豊かな植生を楽しむことが出来るのも魅力です。

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  • 標高: 1,632m
  • 登山適期: 4月~12月
  • 出発&到着: 平沢峠駐車場

【長野】<守屋山> 樹林帯を抜けるとそこは大展望地!

守屋山はマイナーな山ですが、手軽さと穏やかさ、山頂にて得られる絶景はメジャー級、とまではいかなくとも、とても魅力的な里山で登山バスも出ているほどです。
※記事は積雪期のフォトですがご容赦ください。
杖突峠の無料駐車場からハイクアップ。 途中、林道なども通りながら穏やかな樹林帯を進んでいきます。 胸突坂という急登を頑張ってのぼると、すぐに守屋山東峰に到着です。

そこから望める大絶景は特筆に価し、最後の急登を頑張った甲斐がある!ときっと思わせてくれます。 南アルプスや中央アルプス、間近に迫る八ヶ岳連峰など、贅沢なパノラマ風景が広がっています。 山頂は東峰と西峰からなり、西峰が真の山頂とされていますので、東峰にて思う存分絶景を楽しんだら、もう少しだけ歩を進めましょう。 ここから西峰まではほとんどアップダウンもなく、快適なお散歩を楽しめます。

西峰直下にくると、こんもりとした山頂が天空へ続く道かのごとく伸び、思わず駆け出したくなります。 山頂からは、南北八ヶ岳の全山が、大きな存在感で鎮座している絶景を楽しめます。 ここでのんびり過ごす時間はきっと素敵な思い出になることでしょう。

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  • 標高: 1,650m
  • 登山適期: 4月~12月
  • 出発&到着: 杖突峠駐車場

【徳島】<剣山> 天空のお散歩みちの決定版!

剣山 (つるぎさん)、その険しい山名とは裏腹に、子供から老人まで楽しく歩くことができる山、それがここ剣山です。 四国徳島に位置するこの山は日本百名山に選定されており、太郎笈(たろうぎゅう)の別名を持っています。 見ノ越登山口に駐車場があり、そこからハイクアップしてもたいした負荷ではありませんが、より手軽さを求めるなら、リフトを利用し西島駅まで上がってしまうのも良いでしょう。 そこから山頂まではわずか1km程度で到着します。

そして、山頂付近は解放的な笹原広がる天空の別天地! さらに、剣山から伸びる次郎笈(じろうぎゅう)への縦走路こそ、この山のお散歩の醍醐味。 誰もがワクワクするその風景は、駆け出したくなるのを抑えるのが大変かもしれません。

次郎笈からは来た道を戻りますが、もう一度剣山山頂を経由しても良いですし、途中、西側斜面にトラバース道が伸びていますので、そちらを利用すると西島駅にダイレクトに到着できます。 ただし、若干足場が悪いところがありますので安全ハイクを心掛けるようにしましょう。 下山後は、マイカー利用の場合、有名な祖谷渓のかずら橋も道中にありますので、あわせて観光も楽しめます。

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  • 標高: 1,955m
  • 登山適期: 4月~11月
  • 出発&到着: 剣山リフト西島駅

【愛媛】<伊予富士> マイナーだけど素晴らしい稜線漫歩!

伊予富士は、四国石鎚山地に属する日本三百名山のひとつで、石鎚国定公園内にあります。 全国各地の「ご当地富士」は独立峰が多いなか、ここ伊予富士は石鎚連峰の中の一座であり、富士らしい姿をしていませんが、西側のなだらかな斜面がピラミダルなシルエットであることから「伊予富士」と呼ばれています。

登山口から桑瀬峠の尾根に達すると、トレイルの多くは天空の稜線漫歩で、笹原の山肌に一筋に伸びるシングルトラックを歩くのは幸せ感いっぱい! また、西へは百名山である石鎚山へ、東へは二百名山の笹ヶ峰などにトレイルが延びており、北側に瀬戸内海の景色、南側に四国山地の連山を眺めながら、体力と時間が許せばどこまでも歩き続けたくなる、そんな山です。 体力と時期に合わせ、自由にコースを設定できるのも魅力的ですね。

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  • 標高: 1,756m
  • 登山適期: 4月~11月
  • 出発&到着: 寒風山 (伊予富士) 登山口

【福島】<一切経山> 魔女の瞳が開く?神秘的な東北の山歩き

一切経山(いっさいきょうざん)は福島県に位置し、吾妻連峰を構成する山の一つであり、現在も尚、火山活動を維持する活火山です。 浄土平ビジターセンターからハイクアップ。 一部ガレ場などもありますが、全体を通してその山容はとても穏やか。 心地良い木道のポクポク歩きを楽しみましょう。 花の時期なら可愛らしい高山植物がお出迎え。 ガレ場の登りをひとしきり登ると一切経山の山頂に到着です。

そこからは、コバルトブルーに輝く五色沼の絶景が! ちょうど雪解けの時期に重なると、池の中央部から雪解けが始まるため、まるで魔女の瞳が開いたかのように見え、多くのハイカーが「開眼」を見るために訪れる人気の山です。 下山は鎌沼を経由して平和なお散歩を楽しむのがオススメです。

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  • 標高: 1,949m
  • 登山適期: 5月~11月
  • 出発&到着: 浄土平ビジターセンター

※注:2018年9月より噴火警戒レベル2に引き上げられているため、2019年4月現在、入山規制中です。浄土平・吾妻山公式ウェブサイトにて随時情報更新中です。

【栃木】<那須岳> ゴンドラ利用でお手軽絶景ハイキング

那須岳(茶臼岳)は標高1,915Mの活火山で日本百名山に選定されており、日光国立公園に属しているどっしりとした印象の山です。 夏は鮮やかな緑に、秋は見事な紅葉の赤に彩られ、多くのハイカーに愛されています。 那須ロープウェイのゴンドラを利用すると、九合目まで一気に到達することができ、山頂までのお手軽ハイキングが楽しめるため、ロープウェイコースは多くのファミリーで賑わっています。 山頂までは登り一辺倒になるコースですが、距離は900Mほどと短いため、容易に到達することができる手軽さがうれしいですね。 山頂はぐるりとお釜口のお鉢周りを楽しめますので、景色を堪能しながらの天空お散歩を楽しんではいかがでしょう。

その他オススメコースとして、峰の茶屋駐車場からのルートは、那須岳らしさを堪能できるコースです。(距離=4.9km/CT=2:20) さらに、牛ヶ首経由でぐるりと水平移動で周遊できるルートは最もオススメしたいコース。 トレイルはよく整備されており、全体的にずっとポクポクトレイルが続き、平和感と幸せ感を満喫できることうけあいです!(距離=6.7km/CT=3:00)

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  • 標高: 1,915m
  • 登山適期: 4月~11月
  • 出発&到着: 那須ロープウェイ山頂駅

お手軽ですが安全第一で!

今回紹介した山は、一部ガレ場など注意を要する箇所がある山もありますが、基本的には上のフォトのような非常に歩き易いトレイルの山々です。
他にも素敵なところは、文字通り「山ほど」ありますが、まずは当記事オススメの10選を参考にしてみてはいかがでしょうか。
なお、くれぐれも「安全最優先」で楽しいハイクをお楽しみください。 特に「天気」「雨具」「防寒対策」は充分に。
それでは皆さま、どうぞ良いハイクを!

文 三宅 雅也 (山岳ライター、長野県自然保護レンジャー)

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