“トールボーイ”と呼ばれた懐かしのホンダ シティとモトコンポが登場!【オートモービルカウンシル2019】

ホンダブース【オートモービルカウンシル2019】

ホンダブースのテーマはM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想

オートモービルカウンシル2019

4月5日から7日まで幕張メッセを会場に開催されたオートモビルカウンシル2019。

貴重なクラシックモデルの展示即売会という側面のほか、各自動車メーカーがそれぞれ趣向を凝らしたブース出展をしている点も来場者の楽しみのひとつとなっている。

ホンダのブースではクルマの居住空間を広く確保するための設計コンセプトである「M・M思想」をテーマにした展示が行われていた。

M・M思想とはマン・マキシマム/メカ・ミニマムを略したもので、乗員に対するスペースは最大に(マン・マキシマム)、エンジンなどのメカニズムのスペースは最小に(メカ・ミニマム)という思想であり、限られたスペースの中で室内空間を最大限にできるように考慮したレイアウトを指している。

最近ではあまり声高にカタログなどで歌うことは少なくなってきているが、現行モデルのフィットやN-BOXに採用されているセンタータンクレイアウトもその思想によって生まれたものであり、当時の思想は脈々と受け継がれているのである。

そんなホンダのブースでは、現行モデルとして軽商用車のN-VAN、原動機付自転車のクロスカブ50、ハンディータイプ蓄電機のLiB-AID E500が展示され、クラシックモデルとしては1982年式のシティと、同年式の原動機付自転車のモトコンポ、そして1979年式の携帯発電機であるデンタEM400が展示されていた。

これは言うまでもなく過去と未来をリンクさせたものであり、N-VANの車内に積まれたクロスカブ50はシティのトランクルームに積むことを前提に開発されたモトコンポを、蓄電池のLiB-AID E500は発電機のデンタE400をそれぞれ意識した展示となっていた。

シティ、モトコンポ、デンタEM400それぞれ、4分の1サイズの精巧なスケールモデルも展示されていた/ホンダブース【オートモービルカウンシル2019】

この他にシティ、モトコンポ、デンタEM400それぞれの4分の1サイズの精巧なスケールモデルも展示されており、これは発売当時には生まれてもいなかったホンダの若手メンバーが中心となって実車から採寸したデジタルデータを基に作り上げたもの。つまり、過去と未来の技術の伝承というのがホンダブースの裏テーマだったのではないかと勘ぐってしまう筆者であった。

1982年式 シティ

1982年式 シティ/ホンダブース【オートモービルカウンシル2019】

それまでホンダのエントリーモデルの役割を果たしていたシビックが2代目にフルモデルチェンジを果たしたことで実質的なクラスアップとなったため、そのポジションを担うために開発されたのがシティだった。

当時の若者に向けて、平均27歳という若い開発メンバーの手によって1981年に生み出されたシティは、コンパクトなボディサイズの中で大人4人が無理なく座れる室内空間を実現するために「トールボーイ」と呼ばれる背の高いスタイルを採用していた。

3ドアハッチバックのボディタイプのみの展開であったが、商用仕様の「プロ」も用意されたほか、1982年には過給機付きモデルの「ターボ」やハイルーフ仕様の「マンハッタンルーフ」を追加。さらに翌年にはブリスターフェンダーを備えてインタークーラーを追加した「ターボII」を、84年にはピニンファリーナが手掛けたオープンモデルの「カブリオレ」を追加している。

ブリスターフェンダーを備えたターボIIはそのスタイルから「ブルドッグ」の愛称でも知られ、シティターボIIのワンメイクレースの「シティブルドッグレース」では横転上等なレース展開が人気を博していたのは当時を知る人であれば懐かしい思い出だろう。

ちなみに当イベントで展示されたイエローのシティはオーナーカーではなく、新車当時にピックアップされて保管されていた個体とのことでまさにタイムスリップしたかのような状態を保っていた。ホンダファンからしたらこれだけの状態のシティを拝めただけでも足を運んだ価値はあったと言っても過言ではないだろう。

1982年式 モトコンポ

1982年式 モトコンポ/ホンダブース【オートモービルカウンシル2019】

シティのトランクルームに積めるというコンセプトで開発された50ccの原動機付自転車であり、シティのオプションパーツのひとつとしても販売されていた。当時の価格は8万円であり、新車価格が70万円台からだったシティから見るとなかなかの高額アイテムだったと言えるだろう。

ハンドルとシートとステップを折りたたんでトランクルームに横倒しで収納するモトコンポは、当時としても非常にユニークな存在ではあったが販売にはなかなか繋がらず、シティよりも早い1985年には生産が終了していたと言われているが、現在ではその唯一無二のキャラクター性から人気モデルとなっている。

[筆者:小鮒 康一/撮影:和田 清志]

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