日本が誇る職人技 ニューポートビーチで魚の活け締め見学!

By Yukiko Sumi

 普段、何気なく食している魚の刺身や寿司。しかし新鮮でおいしい魚が消費者の手に届くまでには、隠された舞台裏があるんです。〝活け締め〟ということばを聞いたことがあるでしょうか。これは魚の味や鮮度、安全性を向上させるための手法で、魚の中枢神経にワイヤーを通して神経を破壊し、死後硬直を遅らせることで鮮度を保つ処理のこと。ここロサンゼルスにも、その卓越した職人技でレストランに新鮮な魚を提供している活け締め職人がいます。今回のららら隊は、ニューポートビーチまで足をのばして活け締めのようすを見学してきました!

LA在住の活け締め職人、横田清一さん。卸販売のYokose seafood (www.yokoseseafood.com/)。ローカルの飲食業界に新鮮でおいしくきれいな魚を提供している

 2011年にLAへ移住した横田清一さんは、富山出身。実家は明治元年から続く鮮魚の業務卸会社で、横田さんは富山直輸入の魚および活け締めにしたローカルの魚をLAで販売しています。横田さんが売りとするのは、活け締めのテクニックである神経締めを使って新鮮でおいしく、さらに見た目もきれいな魚を提供すること。日本食レストランやイタリアンレストランなどロサンゼルス中の飲食店へ卸しています。

 アメリカでは日本と違って、魚を生きた状態で保つ市場も魚屋もほぼないそうです。横田さんは、生きた状態で浜まで持ってくる米国人漁師と知り合ってから、活魚の入手と活け締めにした魚を売ることができるようになりました。活け締めにした魚は鮮度が3日以上長持ちするため、ローカルのレストラン業界でも大好評。日本が誇る職人技は、米国でも敬意を持って受け入れられています。

①朝6時、ニューポートビーチ到着。朝日が昇る前とあって周囲はまだ暗い
②この日仕入れたのはギンダラ。アメリカで活魚を入手できる場所はほとんどない。数年前、獲った魚を生きたまま売る米国人漁師に出会ったことで、活け締めの魚を提供できるようになった
③横田さんが行うのは、〝神経締め〟という方法。頭部に小さな切れ込みを入れ、そこかららせん状のワイヤーを頭部から刺していき、中枢神経を破壊する。これによって、魚の旨み成分の素となるATP(アデノシン三リン酸)が分解され筋肉(身)が固くなって鮮度が落ちる原因となる死後硬直を遅らせられる
④ワイヤーを抜いたら、包丁でエラの部分にある動脈を切って血抜きをする。腐敗が早い血液が魚の身に回らなくなるようにし、鮮度が落ちて生臭くなるのを防ぐ。通常の活け締めでは大きく切り込みを入れしまうため、魚の外見をきれいに保つことができない。味だけでなく見た目も良い状態の魚を提供したいと考えた横田さんは、独自の神経締めのテクニックを編み出した
⑤横田さんが魚を活け締めにし、内蔵を取り去ると、弟子のクリスさん(手前)が鱗を取るなどの処理を手伝う
⑥処理が済んだ魚をきれいに水洗い。鮮やかな手さばきであっという間に作業が終了
⑦一匹ずつビニール袋に入れて、背中側を下向きにするよう気をつけながらアイスボックスへ
⑧トラックへ積み込んで、午前中にLAのレストランへお届け。いつのまにか太陽がのぼり、すっかり明るくなっていた

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