箱根・大涌谷駅、拡張工事終了 緊急時の収容200人増

緊急時は200人を収容できる大涌谷駅の展望コンコース

 箱根山(箱根町)の火口に近い箱根ロープウェイの大涌谷駅で駅舎の拡張工事が終わり、避難スペースが広がった。シェルターと同じ素材を活用して噴石対策を強化するとともに、火山ガスの影響回避も考慮。日頃は利用客が富士山などの眺望を楽しめる展望コンコースとする。19日から利用され、同社は「より安全に大涌谷観光を楽しんでもらいたい」としている。

 これまで駐車場としていた部分に鉄骨造りの2階建ての建物を増築し、2階に桃源台方面の乗降客が利用するコンコース(広さ171平方メートル)を整備した。噴火時など緊急の際は200人が避難でき、これまで600人だった駅舎の収容可能人数が800人に増加する。昨年5月に着工し、今年3月末に完成した。

 大きな特徴は、防弾チョッキなどに使われるアラミド繊維シートを格子状に敷いた屋根(厚さ約20センチ)。立ち入り禁止エリアで県が建設を進めるシェルターにも同じ素材が使用されており、駅舎の屋根も、拳ほどの噴石が時速約300キロで衝突しても貫通しない強度が確保されたという。

 天井の落下防止措置など地震対策も講じる一方、火口と反対側にある富士山や箱根外輪山を望めるよう二重ガラスを採用。飛散防止フィルムを施し、噴石がぶつかった場合でもガラスが飛び散らない構造とした。ヘルメットやマスク、酸素缶などをガラス戸の棚に備蓄し、利用客がリスクや備えの現状を理解できるようにしている。

 近年の大涌谷は訪日外国人客(インバウンド)の人気が高く、「ハイシーズンには、乗車待ちの列が駅舎の外にまで延びることが頻繁にあった」と同社。「コンコースが整備されたことで駅舎の中で待つ乗客が増え、火山ガスにさらされるリスクも軽減できるのではないか」としている。

 渡邊敬介駅長(44)は「ガス対策も含め、事業者として安全確保は欠かせない。危険性を踏まえつつ、安心して楽しく観光してもらいたい」と話している。

© 株式会社神奈川新聞社