2町長選 終盤情勢

 統一地方選後半戦の東彼東彼杵、北松小値賀の2町長選の投票が21日に迫った。東彼杵町長選は現職と新人の一騎打ち、小値賀町長選は現職と新人2人の三つどもえで、舌戦が繰り広げられている。終盤の情勢を探った。

 ■東彼杵町/“草の根”と組織 対照的

 16年ぶりの選挙戦となった東彼杵町長選は、新人で前町議の岡田伊一郎候補(65)と、3選を目指す渡邉悟候補(70)=届け出順、いずれも無所属=が激突。共に町職員出身だが、“草の根”で支持を訴える新人、強固な組織戦を展開する現職と戦法は対照的だ。2期8年で初めて選挙の審判を受ける渡邉町政への評価や浮動票の行方も焦点となる。

 岡田候補は町職員を退職後、町議を3期務めた。「行政と議会双方の経験」で現職との違いを打ち出し、選挙戦で掲げる政策は子育て支援、福祉、教育、企業誘致など多岐にわたる。ただ5日間の選挙戦で、多様な政策が有権者にどれだけ伝わるかは未知数。1月の出馬表明は現職よりも遅く、支援者からも「準備不足」との声が漏れる。

 一方の渡邉候補は、そのぎ茶の2年連続日本一や公立中学校統合、廃校跡地への私立校誘致など2期8年の実績を強調。1期目から続ける自身の給与5割削減を公約の目玉に据える。町民からは「実行力がある」との評価の一方、「トップダウン的」との批判も。中学校統合については「決定が急で地域や学校現場が振り回された」との不満も一部でくすぶる。

 集会の動員や後援会の機動力は渡邉候補が圧倒するが、陣営幹部は「選挙戦は初めてで、得票数までは読めない」と神経をとがらせる。18日には、岡田候補と親戚関係がある製茶問屋の敷地に事務所を構え、支持基盤の“鉄壁”ぶりをアピールした。

 岡田候補は、4年前の町議選でトップ当選し、上位当選した町議からも「支持」の声が上がる。陣営幹部は「積み上げればかなりの票になる」と期待。現職批判票の結集を急ぎつつ、通勤時間帯のつじ立ちや地域を練り歩くどぶ板戦術で浮動票の掘り起こしを図る。

 投票率は町長選が無投票だった前回町議選の73.58%以上との見方が強い。

 ■小値賀町/三つどもえ 接戦必至か

 小値賀町長選は3期目を目指す西浩三候補(73)、新人で元町職員の西村久之候補(61)、新人で元国際協力機構(JICA)職員の小金丸梅夫候補(70)=届け出順、いずれも無所属=による三つどもえの戦いが熱を帯びている。

 「気を引き締めないと相手に抜かれる。自分のためと思い、最後まで支持を呼び掛けよう」。西陣営幹部は選挙対策会議などで、こうハッパを掛ける。

 同町は選挙の投票率が高い土地柄で、最近の町長選も90%を超えている。人口減などの閉塞(へいそく)感から住民が変化を求める傾向があるとの声も町内からは聞かれ、過去の町長選も接戦が繰り広げられてきた。今回も各陣営は「誰が勝っても大きな票差は出ない」とみる。

 人口約2400人の島で、地縁血縁も強い。選挙戦のしこりが残らないよう、漁協など主な団体には推薦願を出さないのが慣例という。選挙カーからの連呼や街頭を中心に支持を訴えるスタイルが大半で、集会所での演説会などはほとんどない。西候補の陣営幹部は「小値賀の選挙は票が読みにくい」とし、新人に流れやすいという浮動票の取り込みに躍起だ。

 一方、「町民が主役」をスローガンに掲げる西村候補。陣営幹部は「焦点は世代交代。若さを前面に出し、町政の事業を継続しても新たな視点が生まれることをアピールしたい」。総決起大会に参加した60代女性は「住民の意見を反映してくれるのではないか」と変化を期待する。

 “草の根”で活動する小金丸候補は「Uターン施策にも力を入れ、移住者の親、祖父母世代に訴えたい」と語り、支持拡大に懸命だ。

 県内自治体では最も人口が少なく、過疎化、高齢化が進む同町。60代男性は「現職の2期の実績を有権者が『ここまでできた』と見るか、『これだけ』と捉えるかが分かれ目」と話す。

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