今年の中日は面白い、が…本拠地に目立つ空席 8年ぶり優勝に必要な大観衆の力

中日・与田監督【写真:荒川祐史】

6年連続Bクラスからの脱却を図る中日、ベンチの雰囲気もガラリと変化

 中日が好調だ。2019年のペナントレースが開幕し、約3週間が経過した。リーグ3連覇中の広島が開幕6カード連続勝ち越しなしで最下位に沈む一方で、低かった下馬評を覆す戦いぶりを見せているのが、与田剛新監督の下で6年連続Bクラスからの脱脚を図る中日だ。

 17日のDeNA戦を戦い終えた段階で16試合で9勝7敗の貯金2。先日、1046日ぶりに貯金を生み出すと、一度5割に戻ったものの、連勝で貯金を積み増した。巨人と並ぶ2位タイにつけ、2位まで順位を上げるのも3年ぶりのことだ。

 投打の歯車がガッチリと噛み合っている。16試合を戦い終えた段階でチーム打率.280は12球団トップ。チーム防御率3.21、13盗塁はリーグトップ。捕手に加藤匠馬が入るとスタメン野手全員が打率3割を超えるという驚異的な打線になり、課題とされていた投手陣もここまでは上々の安定感を誇っている。

 与田剛監督や伊東勤ヘッドコーチら首脳陣が新たな顔ぶれとなり、ベンチの雰囲気もガラッと変わった。指揮官自らが声を張り上げ、得点が入ったり、ピンチを凌いだりすれば、ガッツポーズで感情を露わにする。先頭に立つ指揮官に引っ張られるようにベンチも明るい。チームが好調なこともあるだろうが、この雰囲気がチームの好調さを生み出している。

 好成績を残しているチーム状況について、与田監督は「手応えはないです。優勝しないと感じないでしょう。数字はいい方がいいけど、手応えとは感じていない」という。ただ、「ステップは踏んでいると思います。(選手の)変化は凄い感じています。秋からの変化は凄く感じる。全て話していたら時間がなくなっちゃうくらい。(変化を感じる部分は)多いです」とも語る。

 17日のDeNA戦で好投し2勝目をマークしたチーム最年長の山井は「チームの雰囲気はいい。みんなが向いている方向が一緒。負けている時も諦めないし、勝っているときは1点でも多く取ろうとなっている」という。中日は明らかに変化の兆しを見せ始めているのだ。

今年の中日は低迷していたここ数年とは違う?

 だからこそ、本拠地ナゴヤドームの閑散ぶりが寂しい。16日は2万2721人、17日は2万2596人。平日のナイターゲーム、しかも17日の名古屋は雨だったこともあり、客足が遠のくのは仕方のない部分もある。ただ、好調なチーム状況となかなかに盛り上がる試合展開でありながら、空席の目立つ本拠地のスタンドはあまりに対照的だった。

 本拠地開幕戦となった2日の広島戦こそ3万2475人と3万人を超えたが、3万6627人の満員には及ばず。翌3日は2万8193人、4日は2万7380人と大幅に減った。今やドル箱カードとも言える広島戦でも客足は乏しく、9日、10日の巨人戦も2万7000人前後。どのカードも平日開催だったとはいえ、6年連続Bクラスと低迷し“負”のイメージがどうしても付き纏うのだろう。

 スタジアムエンターテインメントという部分で言えば、物足りないと言わざるを得ない。いまや各球団が様々な趣向を凝らして生み出しているようなバラエティーに富んだ客席やスタジアム施設は少なく、演出やイベントなどなど様々なファンに野球以外で“特別感”や“高揚感”を与えるものが少ない。野球を観るために訪れる“コアな“ファンはスタジアムに来ても、なかなか“ライトな”ファンが足を運ぼうとはならないかもしれない。

 ただ、今年の中日はここ数年とは違う。面白い。まだ16試合とはいえ、それこそ、粘り強さを見せて、終盤に怒涛の追い上げを見せたり、最後まで試合の行方が分からないような試合が多くある。選手にとって、多くのファンの声援が、間違いなく力になる。勝負どころで、選手を後押しするのはファンの力だ。

 この先、ペナントレースの長く険しい戦いに挑み、Aクラス入り、さらには8年ぶりの優勝を掴むためには、本拠地を埋める大観衆がきっと必要だ。長らくの低迷期により、ナゴヤドームから足が遠のいているファンもいるはずだ。そんな中日ファンには、一度、ナゴヤドームに戻ってみてはいかがだろう。2019年の新生ドラゴンズは、きっとこれまでと違う空気を感じさせてくれるはずだ。(Full-Count編集部)

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