ノッてるコミバス 県境越え、通学利用増

神栖-千葉・小見川駅 実験

©株式会社茨城新聞社

小見川駅に向かうバスに乗り込む学生たち=神栖市平泉東

神栖市と利根川を越えてJR成田線小見川駅(千葉県香取市)を結ぶコミュニティバスの実験運行が、快走している。千葉県の高校などに通う学生の足を確保しようと、神栖市が昨年11月に開始。県内では利用者の低迷を理由に市町村をまたいで運行する広域バスの路線廃止が相次ぐ中、神栖市の県境越えコミュニティバスは新年度、利用者がさらに増加。学生や保護者らから歓迎の声が上がり、本格運行への期待が高まっている。(鹿嶋支社・関口沙弥加)

■次々と学生
千葉県の公立高校で入学式が行われた翌日の10日朝。神栖市平泉東の市立神栖二中近くのバス停に、傘を差した高校生や短大生ら10人以上が並んだ。ここから鹿島セントラルホテルや息栖稲荷などを経由し、小見川駅まで約30分。バス停に停車するたび、次々と学生たちが乗り込んだ。

市によると、この日朝の便は新入生を含む高校生ら42人が乗車。昨年11月の運行開始以来、過去最高を記録し、夕方の便はさらに46人に増えた。神栖市内から通う銚子市立銚子高2年、和賀陽音さん(16)は「バスができて便利になった。(送迎する)親にとってもありがたい」と話す。

バスの実験運行が始まる前、神栖市と香取市方面を利根川を越えて結ぶ公共交通機関はなく、千葉県内の学校に通う学生らは親の送迎や自転車で通学していたという。

■慢性的渋滞
路線バスはかつて、県境越えを含め全国で数多く運行されていたが、国の規制緩和や自家用車の普及に伴う利用客の減少で路線廃止が各地で進んだ。県内では地域の公共交通機関を維持しようと、補助金を活用した広域バス運行の動きが広まったが、利用者の低迷や補助金打ち切りにより路線縮小など見直しを余儀なくされるケースが相次ぐ。

神栖市内と小見川駅を結ぶバス運行が好調な背景には、市内の学生の一定数が千葉県への進学を希望する事情がある。市教委によると2016〜18年度、毎年200人を超える市内の中学生が千葉県内の高校に進学している。

このほか、同市の経済・生活圏が県境を越えて育まれてきた歴史や、利根川に架かる橋周辺の交通事情が要因に挙げられる。千葉県側との大動脈になっている息栖大橋と小見川大橋は、朝夕の混雑が慢性的になっており、学生や保護者から「送迎時の渋滞は大きな負担。バス通学は助かる」と歓迎されている。

■本格運行も
神栖市内を運行する路線バスは、鹿島神宮駅(鹿嶋市)と銚子駅(千葉県銚子市)を結ぶ海岸線と利根川線、波崎海水浴場と銚子駅を結ぶ計3路線がある。

市や住民代表、交通関係者らで構成する「市地域公共交通活性化協議会」は、千葉県への通学者や地域の病院の利用者らの需要を見越し、市内と小見川駅を結ぶ路線を含む2系統の新規路線について、1年間の実験運行を決定した。

平泉関下-小見川駅間は朝夕に計3便で、運賃は学生が利用しやすい170〜200円と比較的安価に設定した。

市によると、運行が始まった昨年11月から3月までの1便当たりの平均乗車人数は受験や卒業シーズンも影響し、9人(平日)にとどまったが、6カ月目に入り認知度が上昇。新年度、通学の足として一気に利用者数を伸ばした。

実験運行の期間は現在、10月31日までを予定している。市はアンケートを実施するなどして利用状況を調査し、実験運行の継続や本格運行の検討を進める方針だ。