定点撮影の楽しみ

撮影例1、左上が「春」、左下が「夏」、右上が「秋」、右下が「冬」(東京都稲城市の京王相模原線)

 同じ場所から同じアングルで定期的に写真を撮ることを「定点撮影」という。似た言葉で「定点観測」もあるが、こちらは写真撮影に限らず気温を測ったり人数を数えたりと内容は幅広いので、定点撮影とは定点観測の一分野だと言うことができる。

 一定の期間を置いて撮影を繰り返すことで、たとえば一日の変化、季節の変化、さらにはビルや街全体が成長する姿を記録することができ、その記録写真を点検することでまた、新しい発見がある。

 鉄道写真の多くが、実は定点撮影の一種だと最近気付いた。ここで撮ればいい写真が撮れるという場所を、鉄道趣味の世界では「お立ち台」などと呼んでいる。列車の編成全体を写せるベストポジションとか、光線の具合がちょうどいい位置とか、周りの風景がきれいに映り込む名所とか、こうしたお立ち台に通うことは、定点撮影そのものである。

 撮影例1は、東京都稲城市内を走る京王相模原線である。沿線一帯は今も住宅開発が進むニュータウンだが、ちょうど丘陵の裾の雑木林を走り抜けるところをうまく写真で切り取ると、まるで山間地を走る鉄道に見えてしまうからおもしろい。ワンポイントのように桜の大木があって、東京都内とは思えない春夏秋冬の情緒あふれる景色を楽しむことができる。

 「電車の写真って、いつも決まり切ったポーズで何がおもしろいの」と言われそうだが、自分で撮ってみればよく分かる。同じような写真でいて同じではない。同じに撮ろうとしてもなかなか同じには撮れない。なぜなら走る列車、特に新幹線のように高速だと、目の前をあっという間に通過してしまい、ピントを合わせるのが一苦労だ。

 ローカル線なら簡単かというと、あまりに本数が少ないと構図を決めるためのリハーサルができない。せいぜい1、2両の短い列車がとことこと走り去ってしまってから、もっとこうすれば良かったと反省しきりである。

撮影例2、JR小海線の小淵沢大カーブ。上は緑濃い真夏、下は山に雪が残る早春

 撮影例2は、山梨県北杜市、JR小海線の小淵沢駅近くの大カーブと呼ばれる有名撮影地で撮ったものだ。数年前、友人のご夫婦がこの近くにログハウスで自宅を建てて以来、時々おじゃまさせていただいているが、私が鉄道ファンなのを気遣って、タイミングが合えばこのカーブの撮影にお付き合いいただいている。

 これまでに3回撮影を試みて、まだ背景にそびえる甲斐駒ケ岳の山頂がきれいに見えた日がない。いずれ撮ってみたいとその日を心待ちにしている。

 各地を旅行して一期一会の出会いも素敵だが、定点撮影で発見する季節や時間の移ろいを感じるのもまた楽しい。

 ☆篠原 啓一(しのはら・けいいち)1958年、東京都生まれ。共同通信社勤務。列車を待っている間、まわりに珍しい野鳥はいないかとバードウオッチングにもはまっています。

© 一般社団法人共同通信社