米軍住宅内飛び地「権利侵害ない」 横浜地裁、訴え棄却

米軍根岸住宅地区

 米軍根岸住宅地区(横浜市中、磯子、南区)内の飛び地のような土地で長年暮らしてきた日本人男性(104)が、日常生活が不当に制限されたとして、国に約4億2千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、横浜地裁であった。高宮健二裁判長は「違法な権利侵害、法益侵害であるとは言えない」などとして請求を棄却した。

 訴訟で男性側は、外出には同地区内を通って米軍が管理するゲートを利用せざるを得ず、パスの提示を求められるなど通行が制限されたと主張。宅配業者や救急車の乗り入れも妨げられるなど、生活の権利を侵害されているとし、それに対する補償も受けられなかったなどと訴えていた。

 高宮裁判長は判決理由で、米軍側の通行制限について、「米軍人も同様の制限を課されており、原告のみが損害を被っているとは言えない」と指摘。さらに米軍施設という性格上、テロや襲撃に備えるため通行を一定程度規制することはやむを得ないとし、通行制限が「社会生活上、受忍限度を超えるとまでは言えない」と判断した。

 判決や横浜市基地対策課によると、男性宅は約43ヘクタールある根岸住宅地区のほぼ中央に位置する。1947年に連合国軍総司令部(GHQ)が周囲の接収を開始。52年に米軍に提供されたが、男性一家を含めた5世帯が接収されないまま取り残された。経緯は不明という。

 同地区を巡っては、男性宅近くに住む別の夫婦が同様の訴訟を横浜地裁で起こし、係争中。日米両政府は昨年11月、同地区の共同使用について協議を始め、具体的な返還時期の調整を進めることで合意した。

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