被災地に元気とエールを~猫型キーホルダーに復興の願い込めて

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廃材を利用して、小さな木彫りのキーホルダーを制作している広島市の会社員、黒木政尚さん。昨年7月の豪雨以降、黒木さんが生み出すキーホルダーは、岡山、広島県内のほか、震災があった北海道の被災地へ。復興に向け頑張っている人たちやボランティアに、そっとエールを送っている。

物づくりが好きな黒木さんは、1年前から木彫りを始めた。廃材を猫の形に彫り出し、紙やすりで仕上げ、顔を描く。手作りなので同じものは二つとなく、表情も全部違ってかわいらしい。「きちんと数えてはいないが、今まで1000個以上は作ったかな」と語る。

出来上がった作品は、知人にプレゼントしたり、イベント等で販売し売り上げを全額保護猫活動に寄付したりしていた。

2014年に広島土砂災害が起きたとき、黒木さんはいても立ってもいられなくなった。「広島に住んでいる者として、何かできることはないか」と、仕事が休みの日に安佐南区や安佐北区の被災地へボランティアに向かった。

「ボランティアは初めての経験でしたが、現場で土砂撤去に汗を流していたら、初対面の人とも自然と仲良くなりました。作業が終わると、大変な目に遭った家主さんがありがとうと繰り返し言ってくださったことが忘れられないです」と黒木さん。被災地の状況が落ち着く11月まで20回以上、ボランティアに励んだという。

昨年7月の西日本豪雨災害後も、安佐北区、瀬野川、安浦、矢野、天応と、大きな被害が出た地域へボランティアに行った。酷暑の中の作業だったが、現場はどこも良いムードだったという。「矢野地区では、力のある高校生が土のうを運んでくれて、知恵と経験のある年配者がいて、皆、何とかしたいという気持ちを一つにして頑張りました。自然と話もはずみ、友達も増えていきました」と振り返る黒木さん。行く先々で、お手製のキーホルダーをプレゼントした。「ボランティアさんがリュックに付けていたよ」「フェイスブックに載っていたよ」と言われるとうれしく、また作ろうという気持ちになった。今年に入って、岡山県の真備町へも2回足を運んで復旧活動をした。体調を崩しやむなく活動をストップするまで、ボランティアに行った回数は38回を数えた。

現在、黒木さんは仕事をしながら闘病生活を送っている。手が足りない地域に行ってボランティア活動をしたいと思うが、今は体調を優先するしかない。

悶々としていたところへ、友人が大量の廃材を届けてくれた。その時、「自分にとって今できることは何か。このキーホルダーを見て笑顔になってもらえたら……」と思ったという。

縦約3センチの小さな猫の木彫りは、1つ完成させるのに20分以上かかる。

黒木さんは作品作りを続けた。そして、まとまった数ができたところで、知人を介し、被災地へキーホルダーを届けることにした。

 

2月23日、倉敷ボランティアセンターへ、呉市の被災地で知り合った木村美枝子さんがキーホルダーを届けた。「この日、ボランティアには1人で行きましたが、『一緒にボランティアがしたかった』という黒木さんの思いも一緒でした」。

応急救護手当て講師でもある木村さんは、今も休みの日にボランティアを続けている。

木村さんのリュックにもキーホルダーが。

2018年9月6日に震度7の揺れが観測された北海道厚真町。2019年2月21日には震度6弱を観測している。厚真町災害ボランティアセンターでは、現在も依頼された先へ、ボランティア支援を続けている。

厚真に届けられたキーホルダー。厚真町のゆるキャラ「あつまるくん」と記念撮影。

厚真町災害ボランティアセンターに黒木さんからフェイスブックを通じて連絡があったのは今年3月1日。「自分は北海道へボランティアには行けないけれど、厚真で頑張っておられるボランティアさんに元気を届けたいので、キーホルダーを送らせてもらえないか」という内容だった。3月15日には、黒木さんの手紙入りで、たくさんの木彫りのキーホルダーが同センターに届いたという。

「遠く広島から気持ちを寄せていただき、ありがたいことです。キーホルダーの中には、北キツネ、25番を付けた真っ赤な猫、新井と書いた猫もあり、見るだけで楽しくなります。これらはボランティアが受け取って身に着けたり、生活支援相談員がこのキーホルダーを手に被災者さんと会話をするきっかけとしたり、仮設で暮らす被災者さんの元へ届けられたりしています」と副センター長の山野下誠さん。黒木さんの被災地への思いは、確実に伝わっている。

イベントで作品を販売し、売上を全額寄付している黒木さん。5月にはイベントに出店予定。現在は、震災のあった熊本へキーホルダーを送るため、制作に励んでいる。

ボランティアがしたい、何か役に立ちたいと思っていても、始めの一歩が出ない人、勇気がない人もいる。そんな人へ黒木さんは「日々の生活でも同じことで、引きこもっていては何も生まれません。体が動くなら外へ出ましょう。もし外出できなくても、SNSで発信するだけで、交流が生まれるものですよ」とエールを送る。

闘病中でありながら、どうしてそこまで被災地へ心を寄せられるのか聞いた。

「九州生まれの私が、広島に縁をいただき、子どもを授かり、仕事をさせてもらって生活できている。私はこの地に守り、守られているのです。感謝の気持ちを、何かで還元しないといけないと思っています。私にできることがあればお役に立ちたいし、困っている人には手を貸したい、ただそれだけです」

 

たくさんの友人やボランティア仲間、フェイスブック友達に囲まれている黒木さん。

感謝の気持ちを忘れないこと、それが黒木さんの「いまできること」であり、「これからも変わらず続けていくこと」なのだ。

 

 

いまできること取材班
取材・文 門田聖子(ぶるぼん企画室)
編集 堀行丈治(ぶるぼん企画室