蒙古襲来沈没船の出土品 保存装置が完成 松浦・埋蔵文化財センター

太陽熱で作った温水と、保存剤にトレハロースを使う沈没船の大型木材保存処理装置=松浦市鷹島町、市立埋蔵文化財センター

 琉球大の池田榮史(よしふみ)教授(63)を研究代表者とする長崎県松浦市鷹島沖の「蒙古襲来沈没船の保存・活用に関する学際研究」で、海底から出土した大型木材の保存処理装置が完成。19日に鷹島町の市立埋蔵文化財センターで公開された。

 海底から出土した木材は陸上での保存が難しい。くぎなどの金属を含んだものは、保存処理をしても空中の水分などで金属部分の腐食が進み、ゆがみや変色、亀裂などの傷みを食い止めることができなかった。

 装置は熱源に太陽熱で作った温水を利用し、電気エネルギーを50%低減。保存剤として一般的なポリエチレングリコール(PEG)に代わり、大阪市文化財協会の伊藤幸司さん(57)らが研究している「トレハロース」(糖)を使う。保存処理後の木材の吸湿性や金属の腐食が抑えられ、PEGに比べて木材への浸透性が高く、保存処理時間が短縮できるようになった。

 木材を浸す含浸槽は、パイプを組み合わせたフレームに建築用膜材のシートを張り、拡張や移設が簡単にできるようコンパクト化。シートには松浦市内に工場がある中興化成の製品を採用し、地元企業の技術とのコラボレーションも図った。制作費は約1千万円。

 松浦市と研究グループは、5月末から同装置を使って出土品の保存処理を始めるほか、同装置の技術を世界に発信する。

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