「専有走行の結果を鵜呑みにせず、予選に向けてリセット」デビュー戦でも落ち着いて状況判断した牧野任祐のアプローチ

 スーパーフォーミュラのデビュー戦となる第1戦鈴鹿でポールポジションを獲得したTCS NAKAJIMA RACINGの牧野任祐。事前の公式テストではチームメイトのアレックス・パロウが先行する形で、パロウの方が上位グリッドに向けて有力視されていた状況で、牧野はどのようにしてポールポジションまでたどり着いたのだろうか。

 ヨーロッパF3、そしてFIA-F2で勝利するなどこの2年は欧州をベースにレース参戦していた牧野は2019年、3シーズンぶりに日本のレースへ復帰。SF14でのレース経験がない牧野は今シーズンより導入された『SF19』の印象について、「昨年まで参戦していたFIA-F2のマシンとはまったくく違う。乗っていて楽しいマシンではあるが、フィジカル的にはきつい」と語っていた。

 またオフのテストではテストプログラムの違いもあるだろうが、トップタイムを連発するパロウに比べてそれほど目立ったタイムを残していたわけではなかった。そして迎えたこの開幕戦の金曜専有走行でも、そのパロウがトップタイムをマークした一方、牧野は7番手。これについて牧野は、次のようにセッションを振り返っていた。

「かなり路面状況が悪かったのですが、土曜日もこのままの状態だとは思えないので、正直あまり参考にならないのかなと思います」

「今日の感触を鵜呑みせずに、今日わかったことを整理して、リセットしてやらないとダメな方向性にいってしまう。暑くなった時や、路面状況が悪くなった時にどうなるかわからないので、しっかり対応できたらいいなと思います」

 その言葉通り、予選はこれまでの状況とは大きく異なる展開となった。TCS NAKAJIMA RACINGは、Q1からQ3までの全セッションでワン・ツーを独占。Q1とQ2ではパロウがトップタイムをマークし、Q3でも山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)のタイムを先に上回ったのはパロウだった。

 それでも最後の最後に牧野はパロウがマークしたトップタイムを0.029秒更新し、1分36秒060をマーク。見事デビュー戦でポールポジションを獲得したのだった。

 2番手のパロウは、Q3ではスプーンでミスをしたというが、予選後の会見では牧野も同様にスプーンでミスがあったと明かした。それでも牧野は、Q2からQ3にかけて0.7秒もタイムを上げている。

「ミディアムタイヤのセットアップが上手くいっていなかったが、ソフトタイヤは良い感触でした。それが形になってよかったです。余力を残す余裕はなかったですし、Q3では僕もスプーンでミスをしたので『やっちゃった』と思いました」

「Q2のあと、Q3でほんの少しセットアップを変えたことが一番大きな要素です。エンジニアさんが良いアイデアを出してくれました」。先行していたチームメイトにも惑わされずに自分の判断、自分のペースで本戦に向けてアプローチしてきた牧野。合同テストの際には「予選で前に行かないとダメだと思うので、まずは予選でしっかり前に出たいです」と語っていたが、まずはその言葉通りの結果を出した形だ。

 次代のホンダを代表する若手ドライバーである牧野は、日曜日にどのようなリザルトを残すことができるだろうか。新しい時代を予感させるスーパーフォーミュラの象徴的な存在になるのかもしれない。

スーパーフォーミュラ第1戦鈴鹿 牧野任祐, 中嶋悟総監督, アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)

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