佐賀の説得が焦点 新幹線長崎ルート 整備方式の議論本格化

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 九州新幹線長崎ルートで未着工となっている新鳥栖-武雄温泉の整備方式を話し合う与党検討委員会の議論が本格化してきた。検討委はこれまで、JR九州と長崎県から考え方を聞き、4月26日に予定する佐賀県の意見聴取を経て、6月をめどに全線フル規格かミニ新幹線のいずれかに決めたい考えだ。進展の鍵を握るのは財源負担の重さに難色を示し「フルもミニも選ぶ立場にない」と受け身姿勢を貫く佐賀県の動向。検討委は同県を議論に参加させるため、財源負担の軽減策を中心に協議を進めているが、無事“終着駅”にたどり着けるかは不透明だ。

 ■にじむ思い

 「早期に整備方針を示してほしい。そして、それは巨大都市圏の経済成長力を取り込むため大阪まで直通運行できるフル規格でお願いしたい」

 4月9日、東京・永田町の衆院第2議員会館。与党検討委の会合で意見を求められた長崎県の中村法道知事は従来の主張を重ねて要請した。提出した資料には、全線フルで整備した場合の利点の列挙とともに「フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)開業を前提に多額の投資をしてきた」「県民も先行きに不安を感じている」-とも記され、後戻りできない中で検討委に事態打開を託す思いがにじむ。

 橋梁(きょうりょう)、トンネル、新駅…。県内で着々と姿を現す長崎ルートだが、本格開業後の姿はいまだ見えない。2022年度の暫定開業は新幹線と在来線特急を武雄温泉駅で乗り継ぐ対面乗り換え(リレー)方式で始まるが、新鳥栖-武雄温泉の整備方式が定まらなければ延々とこの方式が続くことになる。

 「投資効果はほとんどない。いちいち乗り換えていては今より不便になるし、民間企業の長崎・佐賀への投資意欲も減退する」。検討委の一人はリレー方式の固定化を懸念する。

 現在、検討委で焦点となっているのは佐賀県の財源負担軽減策。全線フルとミニ新幹線を比較すると、収支改善効果や時間短縮効果の差は大きく、「今や検討委でミニがいいと言っている人は誰もいない」(委員の一人)。時間短縮効果の割に財源負担が重く、メリットがない-とそっぽを向く佐賀県を何とか翻意させ、長崎県や県経済界などが望む全線フルで本格開業を目指すとの青写真が描かれつつある。

 しかし本当にその実現可能性があるのか。焦点は佐賀県の実質負担額をどれだけ下げられるかにかかっている-とみる関係者は少なくない。

 ■独自の試算

 佐賀県は昨年、全線フルの場合は約2400億円の負担になるとの独自試算を検討委に示した。この額は整備新幹線建設のスキームで地方負担の減額要素となる、JRから国に支払われる線路使用料(貸付料)などを考慮していない。「建設費の仕組みに詳しい検討委に対して示したというより、地元県民に負担が巨額であることを誇張するパフォーマンス的な提示」との声も上がっていたが、国土交通省は今月、貸付料などを加味して試算した佐賀県の実質負担額を検討委に示した。

 それによると、佐賀県の実質負担額は660億円。貸付料のほか、国が事後に地方に返還する交付税措置なども勘案し、佐賀県の試算より大幅な減額となっている。ただこの額で佐賀県が前向きに議論に参加するかは不透明。金額そのものに不確定な部分があり「根拠が弱く、納得して賛成するかは分からない」と行方を案じる声がある。

 ■地方に迷惑

 そこで次の一手としてあらためてクローズアップされそうなのが「FGT開発に失敗した国の責任の明確化」だ。明確化とは、国が開発失敗で地方に迷惑をかけたことを金額として表し、佐賀県負担分に充当することを意味する。

 長崎県議会の新幹線特別委員会委員長の八江利春県議もそう考える一人。「660億円の半分なのか、全額なのか、3分の1なのかは分からないが、佐賀の賛成を引き出すため、検討委には国に対して強い姿勢で臨んでほしい」と話す。

 佐賀県の山口祥義知事は、現行の整備新幹線のスキームのままでは「議論できる状況にない」と繰り返してきた。検討委内で具体化してきた負担軽減策にどういう反応を見せるのか、4月26日の意見聴取が注目される。