「SF19は1コーナーで5Gの負荷がドライバーにかかる」ダラーラ社CEOが明かす、人間の限界に近い高性能フォーミュラカー

 4月20日(土)、スーパーフォーミュラ第1戦が行われている鈴鹿サーキットにてメディア向けの定例会見が行われ、株式会社日本レースプロモーション(JRP)の倉下明代表取締役社長、ダラーラアウトモビリ社のCEOを務めるアンドレア・ポントレモリ氏、1994年に全日本F3000選手権でチャンピオンを獲得し、現在はダラーラの開発ドライバーを務めるマルコ・アピチェラが出席した。

 ダラーラ社といえば、この2019年シーズンより投入されている新シャシー『SF19』の制作した会社だ。そして日本のレースファンにとっては懐かしくもあるアピチェラは、現在ダラーラで開発ドライバーを務めている。

 会見では、まずは倉下社長が2019年シーズンの展望、そして『SF19』の開発に関わった人々への感謝を述べた。

「今年はクルマが新しくなり、ヨコハマタイヤさんが新しいタイヤを作ってくださいました。そして海外からのたくさんの有力なドライバーや、国内の新人など計8名が新しいメンバーとして加わって、本当に熾烈な戦いが繰り広げられると思っております」

「2017年の5月に初めてダラーラ社にお伺いして、皆さんとお話をした時に『とにかくオーバーテイクできるフォーミュラカーを作る』ということで合意して、この新しい車を作るというプロジェクトがスタートしました。昨年もテストを重ねましたが、本当にオーバーテイクがしやすいクルマかどうかというのが初めて試されるのが、明日になるかと思います」

「また先代の社長であり、現在は(JRPの)技術顧問を務める白井裕さんと、長きに渡り私どもとダラーラ社を繋いでくれたル・マンの松永さんのご協力なしに今日を迎えることはなかったと思います。この場を借りて御礼申し上げます」

 ポントレモリ氏は、SF19の開発に関して重視した点を明かし、またF1よりも速く走るSF19が見られるのではないかと期待を述べた。

「1年半前にもこの場でお話をしましたが、今日はSF19を実際にお見せすることになり、大変喜ばしい1日となりましたし、ここにいることを大変光栄に思います。F3もダラーラシャシーなので、ダラーラシャシーに囲まれた週末を大変楽しみにしております」

「私たちは18カ月をかけて開発したSF19がうまくいくかどうか、どのようなパフォーマンスを発揮できるのかというのをみなさんと一緒に目にすることになります。今のところテストのデータを見ても、良い結果が出ていると考えていますので、非常に期待できると思います」

「(SF19は)先代のSF14と比べてもより速いクルマになりました。また我々がJRPと一緒に考えたのは、オーバーテイクはもちろん、もっとアクションの多いクルマをつくるということです。ドライバーにとってもより楽しくエキサイティングなレースができるクルマを開発しました」

「先日オースティンで行われたインディカーは、タイムだけを見れば遅いが、レースを見ている限りは非常にエキサイティングという印象を受けました。ラップタイムが速いというのは重要なことだではありますが、レース中にはたくさんのアクションがあるので、アクションに重点を置いたのです」

「実は、まだスーパーフォーミュラでしか開発されていないものがいくつかあります。例えば、このクルマのセーフティパネルがそうです。JRPと話をしたうえで新しいものを開発して、それをこの車に導入しました」

「高速区間のセクター1では、おそらくF1よりも速いペースで走るところを見ることができるのではないかと思っています」

「横Gですが、1コーナーは(F1に匹敵する)5Gで走ることになると思います。瞬間的なものではありますが、体に負担がかかるので、このGを受けるドライバーは苦しい思いをすることになります。ですが、ドライバーにとっては自分を試す場面でもあると思います。タフなレースになりますが、自分を試すことでより上達し、どんどんスーパーフォーミュラから世界中のレース界に新しいドライバーが生まれるのではないかと期待しています」

「JRPとのコラボレーションだからこそ、この素晴らしいクルマが出来上がりました。プロモーターと1から近い関係でこの車を開発してきたことが非常に重要な要素だと思います。そのおかげで安全面ではヘイローの導入など、FIAの良いところをどんどんスーパーフォーミュラに取り入れることによって、より安全なクルマができました」

 ちなみに、この週末はハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)の父であり、『空力の鬼才』とも呼ばれるエイドリアン・ニューウェイが鈴鹿に来ていることもあって、会見ではニューウェイと話をしたのかという質問が飛んだが、この会見の時点ではまだ会っていないとのことだ。

 一方で、久しぶりに鈴鹿を訪れたというアピチェラ。金曜日には、ダラーラが開発したスポーツカー『ダラーラ・ストラダーレ』でサーキットを走行したという。

「久しぶりに鈴鹿サーキットに来ることができて、非常に素晴らしい経験となりました。それに昨日は、ダラーラ・ストラダーレで2周走りました」

「私もかつてレースをしましたが、ラップタイムがあの頃とは6秒か7秒違うんです。当時も速いとは思っていまいましたが、信じられないような進化です」

「あの当時のF1で言うと、(F3000のクルマは)F1の最後尾のマシンくらいの速さがありました。しかし、SF19はただ速いというわけではなくて安全面のことも考えられていて、速くて安全なクルマです」

 ちなみにアピチェラトダラーラとの関係は、彼がF3に乗っていた30年前にスタートしたとのこと。SF19開発にはアピチェラともうひとりの開発ドライバーが関わっており、全てのパーツの開発に携わってきたという。

 JRPとダラーラはこの協力体制を続いていく方向性であり、将来的にはスーパーフォーミュラのマシンにしか搭載できないようなオリジナルのシステムなどの開発にも意欲を見せている。今後、両者がどのように日本のフォーミュラカテゴリーを引っ張っていくのか、楽しみだ。

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