底荷を重く

 船の積み荷が少なければ、波風を受けて転覆することがないように砂利、鉄の塊、水を積んで重心を下げる。これを底荷(そこに)と言い、バラストとも言う▲バンザーイ、と昨夜は喜びを体全体で表した。かじを取る人が次になすべきは、市民を乗せた船が傾かないよう、底荷の重さを測ることだろう。統一地方選の後半戦が終わり、長崎市長選は現職の田上富久氏(62)、佐世保市長選は現職の朝長則男氏(70)が制した。ともに4期目に入る▲人口減少をはじめ地方都市の課題は山積みで、風はいっそう強く、波はますます高い。底荷とはつまり、航海の安全に徹する堅実な姿勢であり、多選の域に入ってもわが身に独り善がりを禁じる「自戒」のことだろう▲長崎市長選で田上氏は、財政難に直面しながら大型事業へ突き進んでいると、ほかの候補の批判にさらされた。いや、市の身の丈に合う財政運営だと、田上氏はそれを打ち消したが、開票結果を見れば、一定の批判票がほかに行ったと言うべきだろう▲市議、町長、町議と、ほかにも地域に身近な顔触れが決まった。地域の発展に妙案はなかなか見当たらない。知恵を要し、傾ける耳を要する▲航海の進路を誤らないよう、誤らせないよう、おのおの努めてほしい。「地域づくり」の帆を高くして、自戒の底荷を重くして。(徹)

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