<再出発・かわまちてらす閖上>(上)漁亭浜や/「挑戦の場」突っ走る

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プレオープンの来客でにぎわった「漁亭浜や」。閖上の味を発信する=22日、宮城県名取市閖上

 名取川の堤防沿いに飲食店や水産加工品販売の店などが軒を連ねる「かわまちてらす閖上」は、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県名取市閖上地区にとって待望の新商業施設。にぎわいづくりの拠点を目指して23店舗で営業を始め、ゆくゆくは27店の出店を計画する。震災後の困難を乗り越え、創業の地で再出発する3店舗を訪ねた。 (岩沼支局・小沢一成)

 春の光にきらめく仙台湾や名取川を一望し、遠くに残雪の蔵王連峰も映える。

 「ようやく、この地に戻ってきた」。閖上の新鮮な海産物をふんだんに使った料理で知られる飲食店「漁亭浜や」の佐藤智明社長(55)は、新店の窓を眺めながら言葉をかみしめる。

<一時倒産の危機>

 1993年に営業を始めた閖上の店は津波で全て流され、パート従業員とアルバイト学生を亡くした。一時は倒産の危機に直面し、「自己破産を決意した」と振り返る。

 それでも全国からの支援に励まされ、震災の5カ月後、仙台市太白区あすと長町に出店し、事業を再開した。「突っ走り続けた」と言う通り、その後も仙台、名取両市で3店を開いた。

 全国的に評価が高いアカガイや「北限のシラス」など閖上産の海産物に誇りを持つ。「閖上のうまいもんを発信する」。創業の地を離れていた間も、心はいつも閖上にあった。

 「閖上の食材を閖上の風景と共に味わってほしい」。数量限定で提供する「閖上赤貝丼」は、かわまちてらす閖上店だけのメニュー。「ここでしか味わえないから、わざわざ来てもらえる」と胸を張る一品だ。

<ジャンル超えて>

 新店は「挑戦の場」と位置付ける。磨き上げてきた和食だけでなく、「シラスのキッシュ」「アカガイの担々麺」などジャンルを超えたメニュー開発に意欲的だ。復興庁の復興・創生インターンで訪れた女子大生の提案も取り入れた。

 震災前の店からは海が見えず、堤防沿いに店を出すのは積年の夢だった。「水辺でようやく仕事ができる」と表情は明るい。

 「閖上は津波で全て流されたが、海によって生かされてきた街」と言う。いま思い描くのは、復興から発展へ向かう閖上の未来。「にぎわいができて、街が再生していく」。突っ走る日々は終わらない。

[メモ]開店当初のメニューは閖上しらす丼(800円)、閖上海鮮ちらし(2480円)、閖上赤貝丼(3200円)など。席数は65席。営業時間は午前11時~午後9時で、木曜定休。連絡先は022(398)5547。