皇太子時代に松丘保養園を訪問/当時知る入所者 ねぎらいの思い/退位まであと1週間

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1977年10月14日に青森市の松丘保養園を訪れ、入所者を見舞う皇太子夫妻時代の両陛下の写真。同園の創立80周年記念誌に掲載されている
当時皇太子夫妻が訪問した際の写真を眺め、「思いやりを感じた」と振り返る叶さん=4月中旬、松丘保養園

 天皇陛下が退位する30日まで、残すところ1週間となった。陛下は社会的に弱い立場の人、困難を抱えている人に寄り添い続けることを象徴の務めとされてきた。その姿は1977年、皇太子時代に訪れた青森県にもあった。当時、青森市の国立ハンセン病療養所「松丘保養園」で訪問を受けた入所者は、天皇、皇后両陛下にねぎらいの思いを寄せている。

 ハンセン病患者は、長年にわたる国の強制隔離政策により、完治してもなお、家族や親族にすら遠ざけられていた時代があった。同園には今も66人が暮らす。

 「ああ、懐かしいな…。私はこのとき、施設の職員に言われて写真を撮っていたんです」

 60年に25歳の若さで入所した叶順次さん(84)は、40年以上前の園の機関誌や記念誌をゆっくりと眺めた。そこには77年10月14日、当時皇太子夫妻だった2人が園を訪れ、入所者を見舞った際の写真が複数掲載されていた。

 「特別重不自由棟入室者に慰めのお言葉をかけられる両殿下」「一般入園者の立ち並ぶ中を笑顔で話しかけられ『お元気で』とお見舞いの御言葉をかけられる皇太子殿下」。それぞれの写真には説明が添えられている。

 ページをめくりながら、叶さんは「カメラを構えてかなり緊張した」と当時を思い起こす。ただ、掲載されている写真に自分で撮影したものが含まれているかどうか、今となっては記憶が定かではないという。

 それでも、ファインダー越しに見た2人の姿だけは深く心に刻まれた。「病室で一人一人に近づき、医師や看護の職員にまで声を掛けて回られていた。思いやりを感じた」と振り返る。

 あれから40年余り。「在園者にとって、かつてない感激と緊張の一日であった」と当時の機関誌につづった案内役の園長や患者自治会長はもういない。「感激の一日」を知る者は、叶さん、ただ一人となった。

 平成がまもなく終わる。「皇后さまとは同い年で、重ねた年月を思うと特別な感慨がある。長年よく頑張ってこられたと思います」。差別や偏見を被った人生を生き、同園で60年近く暮らすその人はついに自身の苦難は語らず、静かに両陛下をねぎらった。