「下品」「ねたみ」? メドベ選手のコスチュームで論争 フィギュア選手、どこまで許されるか

By 太田清

3月22日、世界選手権の女子フリーの演技を終え、ガッツポーズするメドベージェワ選手=さいたまスーパーアリーナ

 フィギュアスケートがスポーツであることは論をまたないが、アイスショーが完全な娯楽というと違うと言う人が多いのではないか。得点を争う競技ではないものの、冬季五輪や世界選手権で立派な成績を残した選手や元選手がジャンプを含めた高度な技術を披露、演技している点で、スポーツと完全に切り離すのは難しいと思うがどうだろうか。ロシアで、ショーの際の衣装や演技について、どこまでが適当と判断されるか論争を呼んでいる。 

 世界選手権、欧州選手権2連覇の実績を持ち、平昌五輪では銀メダルを獲得、3月にさいたま市で行われた世界選手権で銅メダルを得て復活を印象づけたロシアのエフゲニア・メドベージェワ選手(19)が、19日にソウルで行われたアイスショー「アイスファンタジア2019」で、ピンクのラテックス製の衣装で演技したところ、SNS上で賛否のコメントが相次いだ。ロシアの通信社NSNなどが報じた。 

 毛皮のコートを着てリンクに現れたメドベージェワ選手は、途中でコートを脱ぎ捨て、腹部を露出した、いわゆる「ヘソ出し」のコスチュームで、アリアナ・グランデさんの歌に合わせて演技を行い観客を沸かせた。同選手の友人でブルガリア出身の歌手、クリスチャン・コストフさんがツイッターで動画をアップしたところ賞賛の声に混じって「あんな衣装で滑るのは不適切」「下品」などとする批判も相次いだ。 

 中でもロシアの著名ブロガー、レーナ・ミロさんは、先の世界選手権選考でメドベージェワさんが代表に選ばれたことに一時、疑問符が付けられたことを引き合いに「スポーツの世界ではもう言うことがなくなったので、コートを脱ぎ捨てラテックス製のコスチュームをあらわにするようになったのね」と酷評。一方、浅田真央選手らを育成した名コーチで現在はテレビ解説者のタチアナ・タラソワさんは「コスチュームのどこに問題がある? 何の関係があるの? 体に密着した伸縮性のある衣装で滑るのは普通のこと。どっか行っちゃって。もううんざり。女の子たちにいちゃもんをつけているのは、ねたみからでしょ。自分の姿を見てみたら」と、批判するファンらをののしった。 

 2015年の世界選手権覇者、エリザベータ・トゥクタミシェワさんも、エキシビションなどで上着を脱ぎ捨て、黒い下着を思わせるコスチュームで演技することで有名だが、同じロシアのスケーターのアンナ・ポゴリラヤさんが「私だったらあんなことはできない。将来私の子どもがあんな演技を見て『ママ、あれは何』と聞かれたら、すごく不快に感じる」と批判。

 これに対しトゥクタミシェワさんが「私の将来の子どものことを心配しているようだけれど、自分の子どもには年配者やコーチ、ほかのスポーツ選手の成果を尊重するよう教えるけど、自分の失敗を他人のせいにするようなことは教えない」と皮肉たっぷりに応じるなど騒ぎとなったこともある。 

 アイスショーやエキシビションなどで、許されるコスチュームや演技については人によって感じ方も違うだろうが、当のメドベージェワ選手は「誰がもっとも厳しいコメントを付けるかのコンクール」と表してラテックス製衣装で滑る自分の写真をインスタグラムにアップ。12万6000以上の「いいね」が付いたほか、2000件以上のコメントが寄せられるなど反響を呼んでいる。 (共同通信=太田清)

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