【ソファ問題】途中で直角に曲がった廊下を通り抜けできるソファの最大面積は?

「トライリンガル教育」を推奨する の校長である竹内薫先生。前回、「ソファ問題をプロジェクト学習で解く」ということを実践的にやりましたが、今回はその続きです。

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ソファ問題を取り巻く「知の拡がり」を体験し、吸収していく

【ソファ問題】
幅が1メートルの廊下が玄関から居間に続いています。廊下は途中で直角に曲がっています。この廊下を通り抜けることができる最大面積のソファはどのような形で、その面積はいくらでしょう? ただし、引っ越し屋さんと違って、この世界には「高さ」がありません(2次元世界です)。

前回は、インターナショナル・フリースクールの子どもたちと、ワイワイガヤガヤ、この問題を考えながら、いろんな寄り道をする話を書きました。円周や円の面積といった「曲がった図形」の難しさや、それに「挟み撃ち戦法」で挑戦したむかしの数学者の話、そして、それがもうちょっとのところでビブンセキブンにつながってしまう話……。

そうやって遠回りをしながら、子どもたちは、次第にソファ問題を取り巻く「知の拡がり」を体験し、吸収していきます。

しかし、そんな知の冒険にも、それなりの(暫定的な)終着点があります。もちろん、新しく学んだ武器を手にして、最大面積のソファに迫るのです。

「ワケワカラン!」は「お楽しみはこれからだ!」という意味

これまでの経験から、頭の中だけで考えていても、なかなかソファの面積が大きく「ならない」ことがわかっています。実際、子どもたちはペーパークラフトと粘土を使って、実験を重ねていきます。

すると、やがておもしろいことが起きます。何度も模型の廊下の曲がり角に粘土を通しているうちに、自然と曲がり角の凸のところが削れてくるのですね。すると、そこで粘土のソファが曲がり角の凸側に沈み込み、曲がり角の凹の側に隙間ができます。

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シュレ猫「曲がり角の凹凸って意味不明にゃ!」

すみません。曲がり角の内側が削れて、ソファが内側に寄って、外側に隙間ができるわけです。イメージしていただけましたでしょうか?

実は、子どもたちは、幾何学的な考察から、正方形→長方形→三角形まで、ソファの面積が増えないことを知っており、その後、半円に気づいた時点で面積が1・5倍以上となることもわかっております。

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シュレ猫「幾何学的な考察ってにゃんやねん?」

あー、これは縦かける横で面積を計算する、という意味ですね。あるいは、半円の面積も計算します。

さて、半円の直線部分(=直径部分)の真ん中が小さな半円状に削れると、他の部分に肉付けができる、というところがソファ問題のミソなのですが、計算を簡単にするために、ハマースレーという人が、半円を半分に割って四分円を考えました。四分円と四分円の間に長方形を挟んで、そこが削れると考えてソファの面積を計算したのです。四分円と四分円の間にアーチ型の門が挟まっているようなイメージです。

ぜいぜいぜい、こうやって言葉だけの説明を聞いていると、ナンダカ「ワケワカラン!」となりますよね(すみません、わざとです)。

数学的思考法を身につけるには、まず自分でイメージして「発見する」必要があります。ですから、この問題を楽しむための出発点が「ワケワカラン!」なのであります。そもそも、わかっている(=知っている)問題に感動の場面はありません。「ワケワカラン!」というのは、「お楽しみはこれからだ!」という意味でもあるのです。

ハマースレー型のソファの面積はとても美しい形

ここらで図を引用してみますね。

(四分円と四分円の間にアーチ型の門が挟まっているようなイメージ)

ある子どもは、この形を発見すると「レトロな電話だ!」と叫びました。む、むかしなつかしの電話ってこと? そうか、スマホ全盛の世の中で、電話の受話器の形というのは、子どもにとっては「レトロな電話」なのかもしれませんねぇ(遠くを見る目)。

このハマースレー型のソファ、なんと、面積が2・2平方メートルを超えてきます。あまりに有名なので、どんな家具屋さんにも必ず置いて……ない……ソファです。数学的には有名ですが、実用的というわけではないので。

ハマースレー型のソファの面積はとても美しい形をしています。面積が、

π/2 + 2/π

で表されるのです。ちょっと見とれてしまいますね。

数学の醍醐味は未解決問題の答えを「発見」していくプロセスにある

このソファ問題、実は「未解決問題」だったりします。ハマースレー型のソファ少し改造してやると、もうちょっと流線型のガーバー型のソファとなり、ほんのちょっぴりだけ面積が増えることがわかっていますが、いまだに人類は、それが「最大面積である」ことを証明できていないので、将来、もうちょっと大きなソファが発見されるかもしれないのです。

数学の醍醐味は、未解決問題の答えを「発見」していくプロセスにあります。子どもたちのペーパークラフトでの試行錯誤も、そんな発見プロセスのひとつなのです。

いかがでしょう? ソファ問題は、子どもたちに「数学のおもしろさ、奥深さ」を体得してもらうために絶好の教材だと思いませんか? このプロジェクトを進める際に大切なことは、先生がコーチ役に徹し、安易に答えを教えないこと。子どもたちの発見プロセスを見守りながら、ヒントを出してあげてください。

応用としては、廊下を右に曲がった後、今度は左に曲がらなければならない場合とか、直角なエレベーター坑で3次元のソファ問題を考えるとか、いくらでも工夫できます。

いやあ、算数のプロジェクト学習って、楽しいものですね!

[参考]

Hammersley Sofa

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