「津波が来たら、内陸へ」 横浜駅周辺の避難方向を一本化

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横浜駅周辺の津波避難の方向

 津波が来たら内陸へ-。大規模地震時の横浜駅周辺地区の避難対策を巡り、横浜市や事業者などの協議会が新たな方向性を打ち出した。これまでは浸水リスクの低いみなとみらい21(MM21)地区も避難先に含めていたが、海に近づく形となるため、混乱を招きかねないと判断。避難方向を内陸の高台に事実上、一本化する指針の変更を行った。ただ、ピーク時に10万人を超える地区内の滞留者全員が高台に向かうと間に合わないため、駅付近のビルも避難先として活用する。

 市などは昨年12月、横浜駅周辺地区都市再生安全確保計画を改定し、避難方向の見直しを了承。今年3月にまとめた防災ガイドラインに新たな避難誘導指針を盛り込んだ。駅の改札口付近や地下街に避難マップやポスターを張り、周知を図っている。

 地盤が低く川に囲まれている横浜駅周辺は津波の浸水リスクが高い。東日本大震災を受けて県が公表した最大級の津波想定で、西口や東口の商業エリアはほぼ全面的に浸水することが分かり、買い物客や就業者らの避難先の確保が課題として急浮上した。一方で、隣接するMM21地区は地盤が高く建物の倒壊リスクも低いことから、避難先の一つに位置付けていた。

 しかし、その後の検討で、(1)MM21地区へは海に近づくことになり、避難者が混乱する(2)MM21から内陸へ避難しようとする人と交錯する-といった事態が懸念され、見直しが必要との判断に至った。内陸側の反町、三ツ沢などを中心とした海抜5メートル以上の高台へ誘導する形に指針を変更した。

 ただ、平日午後で最大10万2千人とされる滞留者の避難行動を分析した結果、内陸への「高台避難」が完了するのは1時間25分後と判明。おおむね1時間15分後と見込まれる「慶長型地震」の最大波到達に間に合わないため、市が公共施設や商業ビルから選んだ津波避難ビルなどへの「高所避難」も組み合わせると、おおむね1時間で避難できるとの結果が出たという。

 市によると、横浜駅周辺の避難ビルは15カ所ほど。今後の再開発で増える見通しだが、受け入れ能力は不足しているのが現状だ。

 ガイドラインではこのため、津波発生時の避難先に大勢の人々が集中しないよう分散避難の方針を示すとともに、鉄道を含めた地元事業者や市、県警、自治会などが情報伝達や誘導といった役割を分担すると定めた。市は「高台へ向かうか、ビルの上階に逃げ込むかは、その時の滞在場所などによって異なる」と説明し、状況に応じた判断や行動を促している。

 横浜駅周辺は開発時期が古く、耐震性に課題のあるビルが比較的多いため、揺れによる倒壊や火災も懸念される。また、鉄道の途絶などで3万人余りの帰宅困難者が見込まれており、混乱をいかに回避するかも大きな課題となっている。