<大ヒット盤> 市川由紀乃『雪恋華(ゆきれんげ)』 迫り来る歌唱。ラストの絶唱に聞き惚れる

市川由紀乃『雪恋華』

 これで8作連続の演歌・歌謡曲部門1位とヒットを重ねている女性歌手の新作。前年、高売り上げながら紅白に選出されなかった事に奮起したのか、本作の歌唱は迫り来るものがある。

 表題曲は、許されぬ愛と冬の逃避行を題材にした情炎系の演歌。雪が舞う中を凍えるように繊細に歌う部分と、止まぬ愛ゆえに熱唱する部分の対比が見事。歌い進めるほど感情が昂り、ラストで燃え尽きるように絶唱するのも聞き惚れてしまう。『天城越え』や『越冬つばめ』が好きな人なら悶絶(?)必至。

 カップリングの『鴨川の月』は、恋心を断ち切れぬ女性を歌ったしっとり系の演歌。気品あるまろやかな声が美女の悲哀を増幅する。通常盤には、ファンへの感謝をつづったバラード『あなたがそばに』も追加収録。コブシを封印した伸びやかな歌声はテレサ・テンを想起させるので、今後この路線でも毎回新曲を収録してほしいほどだ。

 初回盤の方には、『雪恋華』のプロモーションビデオの拡大版を収録。本作を聴けば、心の奥底に眠る激情に目覚めるはず。

(キング・通常盤1204円+税)=臼井孝

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