真鶴にコククジラ死体 「生態知る貴重な資料」 北西太平洋で絶滅危機

三ツ石海岸に打ち上げられたコククジラの死体(真鶴町提供)

 真鶴半島先端に位置する三ツ石海岸(真鶴町)に体長約9メートルのコククジラの死体が打ち上がっていたことが、24日までに分かった。関係者は「高波によって打ち上げられたのではないか。珍しい個体群で生態を知る貴重な資料となる」としている。

 町町民生活課や国立科学博物館(茨城県つくば市)によると、11日夕に観光客から「海辺を歩いていたらクジラの死骸が上がっていた」と近くの公園施設に連絡があり、翌12日朝に町職員が現地で確認。写真を通じて同博物館などがコククジラと特定し、18日に同博物館や町の職員ら総勢約20人でクジラを解体した。

 足場が不安定な岩場に打ち上がっており、町は安全性を考慮し公表を控えていた。同博物館が肝臓や胃の内容物などを調査し、骨格を標本にする予定という。

 同博物館によると、打ち上げられたコククジラはオスで、腐敗が進み死後1カ月以上たっており、大きさなどから2歳ぐらいとみられる。過去10年ほどのデータベースでは、日本の太平洋側でコククジラの死体が打ち上げられるのは6件目で、オスは珍しいという。

 岸近くの浅い海域を回遊するコククジラは、北太平洋の東側と西側で生息し、北米沿岸の東側では約2千頭がいると推定。一方、日本や中国、ロシア沿岸の西側では約150頭と推定され「トップクラスの絶滅危惧種個体群」(同博物館)とされる。

 同博物館の田島木綿子研究主幹(海生哺乳類学)は「北西太平洋のコククジラは出産場所や寿命などが解明されていない。東側のコククジラとの違いなど、生態を知る貴重な資料となる」としている。

© 株式会社神奈川新聞社