「成長した姿を見せたい」-。16~18日に長崎市魚の町の市民会館文化ホールであった前進座公演(同市民劇場例会)の歌舞伎「裏長屋騒動記」で、メインキャストの若侍・高木作左衛門(さくざえもん)役を演じた長崎市出身の俳優、忠村臣弥さん(32)。初舞台から13年。演劇との出合いやプロとして感じること、故郷への思いなどを聞いた。
-演劇を始めたきっかけは。
中学3年生のころ、なぜか分からないが国語の先生から「演劇をやってみれば」と勧められた。特にやりたいこともなかったため、進学した瓊浦高で演劇部に入った。顧問の岩永義宣先生は、勉強のためとして演劇部員にプロの芝居をよく見せてくれた。それで演劇鑑賞が好きになり、演じることにも興味を抱き、プロになろうと思った。
-俳優になって印象に残っていることは。
2008年に主役を務めた「さんしょう太夫」。06年の初舞台から2年での大抜てきで、とてもうれしかった。先輩から「役をもらって喜ぶのはいいけど、地獄だよ」と言われ、その通りだった。右も左も分からないままやっていたので大変だったが、先輩らに支えられ、大役を果たせた。
-高校時代の経験で生きていること。
2年生の時、九州高校演劇研究大会で全国大会出場を逃し、とても悔しかった。岩永先生から「頑張らないと上には行けない。挫折をばねにしなさい」と声を掛けられた。その後、部員一丸となって部活に励み、3年生の時は全国大会への切符を手にした。その経験を胸に、頑張っている。
-プロと学生の違い。
お金と時間を使って見に来てくれる人たちの思いを実感している。体調を崩すこともあるが、毎日一生懸命演じなければならない。高校の時のように年1回の大会だけではない。責任の重さを感じている。
-故郷長崎への思い。
何度も長崎で舞台に立っているが、毎回とても緊張する。成長した姿を見せることが恩返しだと思っており、それに応えられているのかと考えてしまうからプレッシャーになっているのかも。
-若者へのメッセージ。
人と人のつながりが薄くなっているように感じる。もっと生で人とつながることが必要ではないか。また、歌舞伎もそうだが、体験したり見たりすることで違う価値観が生まれ、視野も広くなる。勉強も頑張ってほしい。プロになって、知識も含め、もっと勉強しておけばよかったと後悔している。
◎プロフィル
ただむら・しんや 本名・竹下雅臣(たけした・まさおみ)。瓊浦高演劇部で2年生から部長に。3年生の2004年、県代表として九州高校演劇研究大会で最優秀賞受賞。卒業後、劇団前進座付属の養成所を経て08年入座。「さんしょう太夫」「棒しばり」「木槿の咲く庭」で主役を務める。