湘南信金が女性職員の制服を廃止 多様性の実現に意義

私物のスーツを着用して窓口対応する女性職員(湘南信用金庫提供)

 湘南信用金庫(本店・横須賀市大滝町)は4月から、女性職員の制服を廃止した。長年、管理職以外の女性職員に着用させてきたが、「さらなる活躍と個性の発揮を推奨する」ため、男性職員と同様、私物のスーツに変えた。専門家は「『女性は補助職』という意味が込められていた制服を廃止するのは、ダイバーシティー(多様性)推進の観点から意義深い」と指摘している。

 湘南信金は全職員を総合職として採用。ただ長年の慣例で、スカートにグレーのベストを合わせた統一の制服を、管理職以外の女性職員に貸与していた。一方、資産運用の相談などで顧客の自宅を訪問する外勤職は、女性職員も私物のスーツを着用していた。

 今年に前身の横須賀信用組合が創立95周年、湘南信金が誕生して30周年をそれぞれ迎える中、「女性職員が業務の中核として活躍しており、『制服が必要なのか』という議論が出た」という。制服を廃止するに当たり、「窓口を訪れた顧客に不快感を与えない」など、服装に関する注意点をまとめたガイドラインも作成した。

 女性職員はいま、各自がガイドラインに沿って考えた私物のスーツを着て、店頭に立っている。黒色のスーツを身にまとった営業統括本部地域活性課の平辻奈々課長代理(33)は「服装を自由に選ぶことで、仕事面でも自分の頭で考える意識が芽生える」と廃止の効果を口にする。

 ジェンダー研究が専門の神奈川大学人間科学部の笠間千浪教授は、女性の制服について「『女性の仕事は、男性の補助職』という性役割を可視化したもの。今はあまり意識されていないかもしれないが、歴史的にはその意味合いが込められている」と指摘する。

 また制服の多くがスカートで、「女性らしさ」を強要している点も問題視。「現在、中学校の制服でスラックスが選べるようになったり、客室乗務員がパンツスタイルに変わったりする流れがある」とし、「今回の制服廃止は、ダイバーシティー(多様性)の実現に向けて大きな意義がある」と評価している。

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